□囚われた日
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強くなるんだ。
兄さんみたいに。
兄さんよりも。

そのための修業だから全然苦なんかじゃない。

「佐助、あんまり遅くまで練習しちゃだめよ」

母さん違うよ。

「じゃなくて修業だって!」
はいはい、と笑う母さんの声をくすぐったく感じながら家を出た。


今は兄さんの背中はとても遠い。だけど、俺にだってうちはの血が流れてるんだ。
いつかきっと追い付いて追い越してみせる。



「……‥498…499…500…!!」

500までやって出来はまだ六割ぐらい。納得できない結果にあと100と意気込むが立ち上がった瞬間膝が崩れた。

「今日はこれまでかぁ…」
まだまだだけど、それでも今日は昨日よりも百頑張ったから
きっと昨日よりは兄さんに近づいた筈。

そう考えたら嬉しくて顔が綻んだ。
-────ガサッ
「誰だ!」

物音に驚いて振り向いた目に飛び込んで来たのはまばゆい金。次に蒼。

「あ、…ご、ごめんなさいってばッ」

慌てて謝る金と蒼の子どもにしばし見惚れて言葉が出てこなかった。そんな俺を怪訝そうに見て。けれどそいつは声をかけることもなく去ろうとした。

--───ぐい
「うわっ」

そいつが出した声で、自分が奴の首元を掴んでいるのに気付く。無意識の行動に驚いて手を離すとそいつは反動で地面と衝突した。

無言で訴えてくる涙をたたえた瞳に吸い込まれそうになって俺はやっと、さっきとった自分の行動の理由を理解した。

(俺はきっとこいつの瞳をもっと見たかったんだ)

しゃがみこんで目線を合わせるとそいつは怯えたように目を逸らした。

チッ。

「そっち向くな。俺の方を向け」

そう言うとこちらを窺うように目を向けてきた。
うっわ…//すんげーキレーな蒼…。

「//お前、名はなん──「サスケ」

「兄さん!!」

イタチに駆け寄るとサスケは即座に抱き上げられた。

「そろそろ帰るぞ」

そう言うとイタチはもう一人の子に向かった。

「君も早く帰りなさい」

去り際サスケはイタチの背からずっと金と蒼の子を見つめていた。怯え、凄く悲しそうな顔をしていた。

(そんな顔、似合わない)
(きっとあの子には笑顔が似合う)

「ねぇ兄さん、さっきの子───「あの子に近づくんじゃないぞ、サスケ」

言葉を遮る様子にいつものイタチらしからぬものを感じて、サスケはイタチの顔を覗きこんだ。が、そこにあるのはいつもの無表情だけでサスケはわからず悔しく思う。

ただイタチが自分よりもあの子のことを知っているのだけは確信した。







家に帰り着いてベッドに転がり込んでもサスケの頭からはなかなか離れないのはあの色。

(きれーな色だったなぁ…//でも、なんで兄さんは近づくな、なんて言うんだろう。名前だけでも知りたかった。あの子ならお嫁さんでもいいかも//また会えるといーな…。次会ったら絶対笑顔を見てやるんだ…。それで、それで……‥)








「サスケ、ご飯よ──ってあら、この子ったら寝ちゃってる。ふふ。幸せそうに、笑っちゃって。きっといい夢見てるのね。おやすみなさい、サスケ」


甘い、胸をくすぐるような恋に堕ちる前に
まずは君に会いに夢に落ちよう…。
fin.
 

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