球
□仮)
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「ねーねーあとべー」
「・・・」
「あとべーってばぁ」
「うるせえバカ猫」
「にゃ?!酷い酷いよ、あとべー!!不二聞いた?あとべー俺のことバカ猫だって!!(泣)」
「うん、聞いたよ。酷いね跡部は。こんなバカ跡部なんかやめにして僕とつきあおうよ」
俺が不機嫌なのはお前のせいだってんだ、不二周助。
付き合ってはじめてのデート。柄にもなく浮き足立って訪れた喫茶店。赤毛の猫を見つけたまではいいものの、そこにどうしてお前もいるんだ。
『僕は英二の保護者だからね。しっかり君たちのデート見させてもらうよ』
なんていいやがって。俺の計画丸つぶれじゃねえか!しかも保護者なんていいながら隙さえありゃあ、ちゃっかり口説いてやがるし。
「うう・・・。跡ベーは俺のこと嫌い?」
「・・・」
嫌いなわけねーだろ。
「嫌いにゃんだ・・」
悲しげな声に振り返ってみれば猫は俯いていた。流石にやばい。
「ばーか。俺はてめえのこと――「英二もうやめちゃいなよ。今の聞いたでしょ?英二のことバカバカ言うなんて僕許せないよ」
好きだ、と続けられるはずだった言葉は不二に遮られ、おまけに涙を瞳いっぱいにためた菊丸に「跡部にゃんかもう知らない!」と叫びながら去られてしまった。もちろん不二も一緒に消えた。
俺はそれを呆然と見ているしかなかった。