second+word

□光
1ページ/1ページ


「……どうかしましたか?」

そう、訝しげな顔で尋ねる君の顔も可愛いね。

そんな事を言えば、顔を赤くして、からかうのは止めて下さい、と言うだろうね、君は。

「可愛いね」

さぁ、顔を赤くして照れる姿を見せてくれないかな?

そう、思った。

けれど、君は僕の予想を裏切って、僅かに顔を歪めた。

何故、そんな顔を……。

「誤魔化さないで下さい」

Bはぴしゃりと言い放ち、その灰色の瞳に悲しげな色を浮かべた。

「そんな顔をして言われても、ハイそうですか、と言えません」

そんな、顔?

「どういう顔をしていたのかな、僕は」

別にそんな変な顔をしていたとは思わないけど。

ただ………。

「泣き出しそうな子供みたいな顔です」

Bは手に持っていた書類をテーブルへと置くと、ユーゼフの傍に寄り、ユーゼフを見上げた。

「欲しいものがあるのに、我慢している子供の様な」

そんな顔です。

吐息と共に囁かれた言葉。

それは悲しみに満ちた声音だった。

そんな君の顔が見たかったわけじゃない。

けれど。

「……駄目だなぁ、僕は」

ユーゼフは困った様に、眉尻を下げ、Bを見る。

どうしてこの子は気付くのかな。

望んでも手に入らないもの。

諦める事が出来ずに、ただただそれを眺めるしか出来ない。
そんな僕が酷く惨めに思えた。

表面上には微塵も出してなかったつもりなのに。

それなのに。

君は気付くんだね。

「貴方も偶には弱くったって良いんです。泣いたって良いんです」

そっ、とBの手がユーゼフの頬に添えられた。

優しい、暖かい手。

ただ頬に手を寄せられただけなのに、何だか泣きたい様な気持ちになってくる。

僕は泣けないのに。

「………ユーゼフさん」

Bはそっと、ユーゼフの頭を自分の肩に導いた。

「泣いて、下さい」

泣けないよ、Bくん。

泣けないんだよ、僕は。

けれど、君がこうしてくれるだけで、少し、癒される。

「……B、くん?」

彼の肩に額を乗せているから、気付いた。

彼が震えている事に。

額を彼の肩から上げると、そこには静かに涙を流す彼がいた。

「……B、くん?」

涙を拭う事もせず、静かに泣く彼の姿は酷く神聖なものに見えた。

僕とは違う。

「……貴方が泣かないから」

ああ、君は分かるんだね。
僕が泣かないんじゃなくて、泣けないという事を。

「貴方が胸の内だけで涙を流して、その瞳からは涙を流さない」

だから、代わりに俺が泣きます。

どこかで聞いた事がある様なフレーズ。

でも、彼がこうして僕の代わりに泣いてくれれば、僕の所為だ、とも思ってしまうけど。

嬉しい、と思う。

僕は無理に泣かなくても良い、泣けない事を悲しい事だと思わなくても良いんだと言われている様で。

「……ごめんね。ありがとう」

そっと抱き締めれば、控え目に背中に回される手。

君らしいね。

「俺、が、勝手にしてるんだから、謝られる云われも感謝される云われもありません」
「……うん。けど、有難う」

Bは暫くそのまま涙を流し、ユーゼフは慰める様にBの体を優しく抱き締め続けた。






you're my shine.

but i myself am darkness.

the darkness isn't left in shine.

so,the darkness is attracted by light.

but because there is light, there is darkness.

i don't have to be pessimistic.

because you're here.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ