頂き物

□ほら、好きだって言って。
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むせ返る程、甘ったるいそれ。




ほら、好きだって言って。





紅葉が風に舞う、少し肌寒い季節。


「寒…っ」

「だから言ったじゃないですか」


数十分前の記憶が悟浄の脳裏にありありと思い浮かぶ。

買い出しに付き合わされるのはいつものこと。ただし、今日は寒いからと手渡されたマフラーを断ったのは失敗だった。

寒さに背中を若干丸めつつ、ポケットに手を入れて歩く悟浄の腕には、もちろん大量の袋。ネギが覗いているのはご愛嬌。

それに比べて八戒は、マフラーをしっかり巻いているし、荷物は悟浄より明かに少ない。メモ用紙を片手に買い忘れたものがないか確かめている。

記憶とメモを合わせつつ、八戒はしばし思考に耽る。

そして、「あ」と何かに気付いた。


「ん?なんか買い忘れたもんあったか?」

「はい。悟浄、ここでちょっと待ってて下さい。」


はい、と自分の荷物を悟浄に手渡すと、八戒はパタパタと店に駆け込んでいった。

数分後に走って戻ってきた八戒の手には、小さな袋。


「なに、それ」

「たいしたものじゃないです」

「ふぅん…」


対して気にもせずに、悟浄は吸っていた煙草を靴底で揉み消して、携帯灰皿に入れる。そして、重たい荷物をよいしょと持ち上げた。

先ほど八戒が持っていた荷物も、まとめて。


「…持ちますよ?流石に重いでしょう」

「俺、こーみえても力持ちよ?」


と言いながらも、少し足元が覚束ない。八戒は黙って、自分の分の荷物をひょいっと持ち上げた。


「貴方の細すぎる腕の、どこにそんな力があるんですか」


悟浄なりの不器用な優しさに頬が緩むのを感じながら、八戒は悟浄より一歩先を行く。

目指すのは、三蔵と悟空が待つ宿。買い物が終了次第、出発する予定だった。

ただし、予定通りにいかないのが、予定というものだ。
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