頂き物
□初・体・験
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初体験
バタン!!
「悟浄っ!!」
勢い良く開いた扉。
そして珍しく血相を変えて、声の主は悟浄の部屋に入って来た。
「おい、三蔵。お前ね、ノックしてから入れって何回言えばわかんのよ。もし俺がアレなナニ中だったらどーすんだ」
「うるせぇ」
このぞんざいな態度は何だ。
血は繋がってないにしても、小学生の頃から悟浄は三蔵の義兄という立場にある。
なのにこの生意気な義弟は常に上から目線だ。
中学生になった今もそれは変わらない。
いや、むしろ悪化している気もする。
(絶対コイツ俺の事下に見てるよな〜…)
でも確かに、ある日急に初対面で「今日から貴方のお義兄さんになる人です」なんて言われた奴を、素直に認められないのはわかる気もする。
「おい、悟浄」
物思いに耽っていた悟浄を、三蔵が腕組みしながら偉そうに呼ぶ。
「……ハイハイ、なんだよ。何か用デスカー?」
「体が、変だ」
「…………は?」
投げやりな悟浄の言葉を気にする事なく、三蔵が訴えたのは、体の不調。
「なに。どっか具合悪いのか?痛いとか?」
「違う」
「はぁ?じゃあ何よ」
混乱する悟浄から、三蔵は目を逸らせて床を睨む。
最近、この仕草をよくするようになった。
前は目を逸らすなんて滅多になかったあの三蔵が、悟浄にだけ、それを見せるようになったのだ。
(中学生だからなぁ〜…色々、思春期特有の何かがあるんだろうけど)
「………悟浄、今日バイトは?」
「あ?ねぇよ」
「あの女は?」
「彼女の事か?別に今日は予定入れてねーけど……」
床を睨んだまま、三蔵は口だけ動かす。
眉間に皺を寄せて。
「なに変な顔してんだよ。んで?体、どこが変なんだよ」
呆れたように悟浄が言えば、三蔵の瞳が揺れる。
これは本当に珍しい。
「おい、さん………」
「熱いんだ」
「あ?」
「………ここが、熱い」
言って、三蔵が悟浄の座るベッドに近づき、悟浄の手をとる。
そしてゆっくり、そこに導いた。
「―――!!」
「……………」
「お…おまっ……」
口をパクパクさせて悟浄は狼狽えた。
それはそうだろう。
導かれた先は、三蔵の股間だったのだから。
「この間から、お前の顔見る度にここが熱くなる…」
「っ〜〜……お前ね…保健の授業ちゃんと聞いてないのかよ?習うだろ?男と女の夜の営みの事くらい」
「知らん」
知らんて……。
悟浄はガックリと肩を落としてうなだれた。
「じゃあ友達同士でさ、そういう話とかしねぇの?」
「友達………しない」
「まぁしないだろうな。お前そもそも友達少ねーし」
「うるせぇ」
「で?いつまで俺はお前の触ってなくちゃなんねーの?」
三蔵はずっと手を握ったままだ。
勿論、導かれた手もそのまま。
「なんとかしろよ」
「俺が知るかよっ!トイレか風呂にでも行って自分で処理しろ!」
「…やり方知らない」
「だから何でだよ!お前もう中学生だろがっ!」
「興味なかったからな」
「エラそうに言うな!」
つまりは何だ?!
俺にこれを静めろと!?
「……………わぁーった。一回ヤってやっから、こっち来い」
一応、俺はコイツの義兄だ。
義弟がクラスの奴らに馬鹿にされないように、一通り教えてやって……。
「…………」
ボスンと三蔵がベッドの端に座る。
「いいか?まずは雰囲気作りからだ」
悟浄は立ち上がり、カザゴソと引き出しを漁り始める。
やがて取り出したのは、一枚のDVD。
「コレコレ。にぃちゃんのオススメよ〜?」
ウキウキしながら悟浄がデッキにそれをセットし、再生を始めた。
『あぁ〜〜んっ』
流れ始めた映像は、いきなりの濡れ場。
三蔵は初めて見るその映像をマジマジと見つめている。
「どぉーよ。この女。三ちゃん初めてだろ?」
ニヤニヤしながら悟浄が三蔵の顔を覗き込むが、肝心の三蔵は無表情に流れる映像を見ているだけ。
「……………アレ?」
予想外の反応に、少し焦った悟浄は、先程は少し勃っていた三蔵の中心を触る。
「…なんだ」
「なんだじゃねーよ!なんでお前萎えてんの?!」
「………つまんないからだろ」
「えぇえ〜??!オニイチャンショック!!」
「……してくれるんじゃないのか?悟浄」
その言葉にハッとする。
そういえばそうだ。
だけどもこの状態で!?
AVでも見せれば勝手に盛り上がって、さっさと終わると思っていたのだが……。
「思春期の多感な時期に無反応って、お前マジでヤバくない?」
「早くしろよ」
「っ……あーっ、ハイハイ!」
覚悟を決めて三蔵のズボンに手をかけた。
ベルトを外して、ジッパーを下ろす。
「……っ…」
三蔵が息を詰める声が聞こえた。
下着から取り出したそれは、また少し勃っていて……。
「なんでまた反応してんの?AVじゃ勃たないクセによ」
「うるせぇっ」
「よくわからん…」
首をかしげながらも、悟浄はゆっくりと手を動かし始めた。
「っ…!」
「いいか?こーやって……」
「っ……っ…ごじょ…」
悟浄の吐息が、声が、三蔵の耳を掠める。
「…気持ちいいだろ?男はこうやって自分を慰めなきゃなんねーの」
「はっ……なんか、出そうだ…っ」
「いいぜ。ほれ」
早く終わらせたいが為、悟浄は三蔵自身をティッシュで包んで手の動きを早くしていく。
「…っ…くっ!」
そうして呆気なくドクンと弾ける三蔵。
「おー。出た出た。お初おめでとさん。今日は赤飯か?」
悟浄が冗談めかして笑い、汚れたティッシュをゴミ箱に投げた。
その時、一瞬だが三蔵に背中を向けた悟浄。
ガシッ!
「へ?」
気付いた時には、三蔵が背中にのしかかり、うつ伏せでベッドに寝ていた。
「っ重!なんだよ馬鹿!」
「悟浄……」
耳元に聞こえるのは息の荒い三蔵の声。
「ちょ…お前、どしたん?」
「っ……」
「さん、ぞ―――!!」
悟浄の動きが止まる。
太もも辺りに違和感。
「………へ?」
今放ったばかりの三蔵自身が、硬度を保ったまま、悟浄の太ももに触れている。
「っ…悟浄……」
「―――!っ三蔵!?」
スルリと三蔵の手が服の裾から侵入してくる。
少し平熱の低い三蔵のひんやりとした手が、悟浄の腹筋を撫でた。
「わぁーー?!お前何してっ、どけっどけっ!!」
「っ嫌だ……」
「嫌じゃないっ!これニィチャン命令だからっ!」
悟浄が言うと、三蔵の動きがピタリと止まる。
わかってくれたかと悟浄が安堵の溜め息を吐いていると、三蔵が密着していた体を離した。
「はぁ〜…脅かすなよ。俺、義弟に犯されんのかと………」
言いながら、体をあお向けにした悟浄の顔の両横に、
バンッ。
三蔵の腕が下ろされた。
「………三蔵…?」
驚いて目をパチクリと瞬かせる悟浄。
真正面には、少し怒りを含んだ三蔵の真剣な顔。
「……俺は、悟浄を『兄』だなんて思った事………ない」
「―――!!」
それまで喧嘩は絶えずとも、仲の良い義兄弟だと思っていた悟浄には、衝撃すぎる三蔵の言葉。
血は繋がらなくても、ちゃんと、家族なんだと……思っていたのに。
自分だけだったというのか?