頂き物

□スレチガイ
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「さぁーて。とっとと終わらせるか」

一人、誰もいないオフィスへと戻った悟浄は、山のような書類に苦笑いを浮かべながら大きく伸びをする。

そうしてペンを片手に持ち替え書類に向かい。

「…あれ?」

不意に悟浄が小さな声で不思議そうに首を傾げた。

先程まで綺麗だったはずの書類の文字が、小さな水溜りのようなシミによって滲んでいたのだ。

「なんだよこれ」

そう言いながらシミの出来たところに指先を這わせれば、ぽたりという音と共にもうひとつシミができる。

怪訝そうに眉を寄せながら、落ちた雫の出所を探るように指を動かせば、それは自分の頬へと辿り着き。

そこまできてようやく、そのシミが自分の零した涙だということに気がついた。

「…あれ?なんでだ?…変だな」

ブツブツと呟きながらスーツの袖でごしごし涙を拭うものの、止まる気配のないそれは次から次へと書類を滲ませていき。

「…っ、…止まんね…ッ」

悲鳴にも似た小さな嗚咽が、誰もいないオフィスにこだました。
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