キリリクU

□bad friends
3ページ/3ページ


「…」
「悟浄の耳と声と目が…」
「あぁ、原因は今日のあの親子だろう。アイツはしらずしらずに自分を重ねているんだ」
それで、臆病になって、何もかもを投げ出して。
「今は…」
「部屋に閉じこもっている」
三蔵は突き飛ばされた胸をさすった。
「…昔にもあったそうだ、どんな状況下だったかはしらねぇが…」
「悟浄は昔のことはあまり話したがりませんからね…」
「時々うなされたりすると、やめてって言って泣いてた。…ずっと隠れて泣いていたのかな…」
気丈にふるまって誰よりも三人をまとめようとして。
「…きっとそうだろ」
吸った煙草を灰皿でもみ消して部屋の扉の前まで歩いた。
「どこへ?」
「迎えに行ってくる」

「悟浄」
盛り上がった布団の横に腰掛けた。
「…一人で泣くな」
布団をめくれば泣きぬれた瞳が虚空をさまよってた。
身体を抱き起し抱きしめた。
何が起きたかわからず三蔵の胸を抑えた。
「お前はひとりじゃない、…だからもう泣くな。」
聞こえなくても、見えなくても。
「俺はお前を愛してる」
いつだって確認してあげる。
何度だって伝えてあげる。
だから、もう一人だと思わないで
ずっと一緒にいてあげる。
「過去の分も、傷を含めてお前を受け入れるように、俺も努力するから。」
何度だって愛してるって叫び続けるから。
愛してるなんて感情よりももっと、もっと…

「君を大切にしたい」




キス
瞼があがる。
赤い玉。
「…さ…んぞう?」
「あぁ、」
「…三蔵なの?…」
「もう、泣くな。…なくならココに来い」
頭を三蔵の胸に押し付けられた。
「お前は独りじゃない。耳が聞こえなくなろうが、声が出せなくても、目が見えなくてもお前を愛してる。一人になんてさせない」
「なんで…」
「お前の事なんて考えればわかる。ネガティブなお前だからな。」
また三蔵は悟浄を抱きしめてきつく抱きしめる。
「三蔵を失ったのかと…思った」
「…」
「愛してもらえないと思った…」
「ばかだな…思うわけねぇだろ」
「馬鹿とか言うなよ…ほんとに…」
一人になってしまったと思った。
貴方と出会って…一人でいることが怖いと思ったんだ。
「本当にバカッパなんだからしかたねぇだろ」
「なっ…」
「早くしろ、出発するぞ。…来いよ」
差し出した手に笑って手を握る。

言葉なんかじゃ役不足なんだ。

僕らには言葉じゃもっともっと言い伝えられない感情があるんだ。

それを僕らは君に伝えるために今日も、生き続ける―

end
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ