短篇&キリリク

□CRSTAL MERODY 3章
2ページ/3ページ



++


コンコンッ…。



「ほいほい、空いてるよー」


「失礼します。」


「よぉ、あんたキラの相方のアスラン・ザラだっけ?」


 突然アポもなく訪れた俺を、ムゥ・ラ・フラガは驚きもせずに迎えてくれた。

 そして満面の笑顔で俺を見てくる。
 

キラは、あんなに泣いて悲しんでいるのにこの男は、すごく楽しそうな雰囲気を漂わせていた。


 付き合っていた二人なのに、この差は何だ?


 屈託のない明るい顔を向けられて、沸々と怒りが沸く。


「………」


「まぁ、汚いとこだけど・・・座れば?」


「いいえ、結構です。用事が済み次第、すぐに失礼しますので」


「ああ、もしかしてキラのこと?」


「はい、俺が今日ここに来たのは真相を聞く為です。」

 本当にキラの言っていた通りに破局したのか。
 それが聞きたくてここに来た。

 彼も、俺が尋ねてきた理由が何となく分かったらしかった。


 俺のほうも、まどろっこしいのは嫌なので、いきなり直球で聞くことにする。


「キラから、貴方と別れたと聞きました。そして、一方的にふられたのだとも。どういう事です?キラと貴方は、お互い好きだから付き合っていたんじゃないんですか?」


「ああ、そうだよ。俺達は好き合っていたし恋人同士だった」


「恋人同士だった…と言う事はもう過去形だということですよね?キラのこと、もう愛想が尽きたのですか?」


 キラたちは付き合い始めてから、1ヶ月も経っていなかった。
世間ではどうか知らないが、幾らなんでも早すぎるのではないか?


そう問いかける俺に、彼はあざ笑うかのように顔を歪めて言った。


「別にキラが嫌いになったとかそういう訳じゃないさ。むしろ、今でもキラの事は好きだよ。」


「だったら、何故…」

突然、別れるなんて…。

「キラから聞いてると思うけど・・・。俺さ、婚約者ができたんだよね。相手は、大手レコード会社の社長さんのご令嬢でさ。」


「………」


「まぁ、今は婚約が無事に成立するか大事な時期だから、男の愛人とかがいたら困るわけよ」


 勝手な都合を語る男。

聞いている内に怒りが沸き、こみ上げる激情を押さえるのに必死だった。


「キラは可愛いし、素直だしさ、俺の事すごく想ってくれてるから、悪いなーとは思ったんだけど。捨てるには惜しすぎる物件だし?」

「……っ」

「だけどさ、男の愛人一人の為に今後の人生を棒に振るなんて事できねーじゃん?せっかく、降って沸いた縁談なんだ。これを逃す気はないんでね」


「そんな理由で…」


 キラを捨てたというのか。

 あんなに、自分を慕っていたキラを…。


「…じゃあ、あいつはどうなる?」


「あ?」


「貴方は、婚約やら縁談やらで幸せかもしれないが、あいつは…。キラは…」


 脳裏に、泣きじゃくるキラの姿が浮かぶ。
 

「キラがどれだけ傷ついたか・・・!貴方を想って、泣いたか分からないのかっ・・!」


 怒りの感情が先立って、目の前が赤く染まる。


 そんな理不尽な理由で、キラを捨てる男が心底、憎かった。


「あーあ。やっぱり泣いてたのか。そりゃ、悪い事したな」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ