短篇&キリリク
□CRSTAL MERODY 3章
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コンコンッ…。
「ほいほい、空いてるよー」
「失礼します。」
「よぉ、あんたキラの相方のアスラン・ザラだっけ?」
突然アポもなく訪れた俺を、ムゥ・ラ・フラガは驚きもせずに迎えてくれた。
そして満面の笑顔で俺を見てくる。
キラは、あんなに泣いて悲しんでいるのにこの男は、すごく楽しそうな雰囲気を漂わせていた。
付き合っていた二人なのに、この差は何だ?
屈託のない明るい顔を向けられて、沸々と怒りが沸く。
「………」
「まぁ、汚いとこだけど・・・座れば?」
「いいえ、結構です。用事が済み次第、すぐに失礼しますので」
「ああ、もしかしてキラのこと?」
「はい、俺が今日ここに来たのは真相を聞く為です。」
本当にキラの言っていた通りに破局したのか。
それが聞きたくてここに来た。
彼も、俺が尋ねてきた理由が何となく分かったらしかった。
俺のほうも、まどろっこしいのは嫌なので、いきなり直球で聞くことにする。
「キラから、貴方と別れたと聞きました。そして、一方的にふられたのだとも。どういう事です?キラと貴方は、お互い好きだから付き合っていたんじゃないんですか?」
「ああ、そうだよ。俺達は好き合っていたし恋人同士だった」
「恋人同士だった…と言う事はもう過去形だということですよね?キラのこと、もう愛想が尽きたのですか?」
キラたちは付き合い始めてから、1ヶ月も経っていなかった。
世間ではどうか知らないが、幾らなんでも早すぎるのではないか?
そう問いかける俺に、彼はあざ笑うかのように顔を歪めて言った。
「別にキラが嫌いになったとかそういう訳じゃないさ。むしろ、今でもキラの事は好きだよ。」
「だったら、何故…」
突然、別れるなんて…。
「キラから聞いてると思うけど・・・。俺さ、婚約者ができたんだよね。相手は、大手レコード会社の社長さんのご令嬢でさ。」
「………」
「まぁ、今は婚約が無事に成立するか大事な時期だから、男の愛人とかがいたら困るわけよ」
勝手な都合を語る男。
聞いている内に怒りが沸き、こみ上げる激情を押さえるのに必死だった。
「キラは可愛いし、素直だしさ、俺の事すごく想ってくれてるから、悪いなーとは思ったんだけど。捨てるには惜しすぎる物件だし?」
「……っ」
「だけどさ、男の愛人一人の為に今後の人生を棒に振るなんて事できねーじゃん?せっかく、降って沸いた縁談なんだ。これを逃す気はないんでね」
「そんな理由で…」
キラを捨てたというのか。
あんなに、自分を慕っていたキラを…。
「…じゃあ、あいつはどうなる?」
「あ?」
「貴方は、婚約やら縁談やらで幸せかもしれないが、あいつは…。キラは…」
脳裏に、泣きじゃくるキラの姿が浮かぶ。
「キラがどれだけ傷ついたか・・・!貴方を想って、泣いたか分からないのかっ・・!」
怒りの感情が先立って、目の前が赤く染まる。
そんな理不尽な理由で、キラを捨てる男が心底、憎かった。
「あーあ。やっぱり泣いてたのか。そりゃ、悪い事したな」