短篇&キリリク
□CRSATAL MERODY プロローグ
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「――――――っ・・・」
初めて、彼の声を聞いたときの感動はどう表していいか分からないほどだった。
体中を、びりびりと電流が駆け抜けるみたいな衝撃。
全身の細胞全てが揺り動かされるような、破壊力を持った声と、音。
甘いようで、涼やかな。
深いようで浅く、どこまでも透る美しい旋律。
まるで、少女のような高いボーイソプラノ。
彼の人柄が声に出ているのか、穏やかでなおかつ優しい音の波。
それでいて、どこか危なげな・・・普通なら決してやらないであろう大胆な歌い方をする。
けど、それが反って彼の持ち味を出す結果となって、余計に彼に華を与えているのだ。
彼の歌を聞いているだけで、何か心に滲むものがある。
胸が痛くなって、熱つくなって…堪らないような気分になる。
「………っ…」
なんて、綺麗で危なげな歌を歌うんだろう。
見る限り、歌っている人物は男であるはずなのに、女のように華やかで華奢…そして儚い。
それでも、彼が男であることを強調するかのように、パワーのある力強い声。
彼の世界に、引き込まれていくかのように意識が全て歌い手に持っていかれる。
そして気が付いたら、俺はそのとき生まれて初めて「感動」というものを覚えていた。
歌が終わって、回りから拍手の海がこみ上げても、俺は魂を抜かれたみたいに呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
ただ歌の余韻と、あまりの出来事に思考が付いていかなくて。
ステージを終えた歌い手が、こちら側に手を振ったときに、ようやく意識を取り戻す。
―――――そして、その時思った。
「こいつだ…」と。
俺が、探していたパートナーは彼だ。
一緒に組むとしたら、こいつしかいないと。
俺の欠けていたものは、こいつが全部持っている。
そう激しい想いに突き動かされ、気が付いたらステージ上の彼に話かけていた。
そして現在、俺とキラはアイドルユニット「FREEDAM」を組み一緒に活動している。
衝撃に突き動かされユニットを組まないかと突然、持ちかけた俺に、彼はにっこりと笑って了承してくれた。
波長が似ていることもあって、すぐ俺たちは打ち解けて、無二の親友になるまでに時間は掛からなかった。
そしてせっかくユニットを組み、同世代同士だからという事で、一緒にも暮らしている。
仕事の面でも、友人としても相性が良くて、一緒にいると楽しくて…。