小説 1

□Puple Olion 第二章(1-4)
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「わ、シン!?いつからいたの?」

思考を飛ばしていたらしい彼は、俺の大声にびっくりしたらしく、わたわたとしている。
そんな動作が、可愛らしくて思わず笑みが浮かんだ。

「さっきから、呼んでましたけど?」

「ごめん、気が付かなくて。ちょっと、ぼーっとしてたみたい」

 キラさんは俺より年上なのに、どこか抜けているんだよな。そこがほっとけないんだけど。

「海を、見ていたんですか?」

「うん。今日はすごくいい天気だったからね。トリィも外に行きたそうだったから」

 トリィは、アスランさんがキラさんに送ったロボット鳥だ。

キラさんは優しげに肩に止まったトリィを見た。

「あの人のこと考えていたんですか?」

 あの人というのは彼の思い人のこと。

「みて、シン。あそこに一番星が出てるよ。」

「もう、誤魔化さないで下さいよ」

 キラさんは、いつもあの人の…アスランさんの話題を持ってくると話を逸らそうとする。
彼とキラさんは、恋人同士なのになんでだろうといつも疑問に思っていた。

 まあ、問い詰めても仕方ないし、深くは聞かないことにしておこう。
気まずい雰囲気になっても嫌だから。

 キラさんの座っている横に腰を下ろすと、目の前の空を見る。
夕焼けを通り過ぎた空は、薄い蒼の色をしていた。

 そこに、小さな光が一つ。さっきキラさんが言っていた一番星だろうか。

 紫色の小さい星。
淡く光を放つそれは、なんだかキラさんに似ていた。
 
「綺麗ですね」

「うん、そうだね。」

 しばし2人で星を見上げていた。

「ねえ、シン。あれからもう一年経ったんだね」

「もう、そんなに経ちますか・・・」

 長く続いた戦火が去って、早一年。

世俗と遮断されたこの島にいたせいで、時間の感覚がまるでなかったかけれど・・・もうそんなに経っていたのか。

 一年も経ったなんてあんまり実感が湧かないけど。

「それでね、ずっと君に聞こうと思っていたことがあるんだ。」

「何ですか?そんな、改まって・・・」

 いつになく真剣な彼に、思わず俺の声も硬くなる。

「シン、君はこれから、どうするんだい?」

「どうするって…」 

突然、問いかけられて返答に困る。
だって、そんなこと聞かれるとは思わなかったから。
これから…か。

「俺は、特にしたいこともないし…。このままここにいようかと…」

 ここは、穏やかだしキラさんといると癒されるし、本気でここに永住してもいいなと思っていた。

「それは駄目だよ」
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