短篇&キリリク

□CRSTAL MERODY 3章
1ページ/3ページ




・3・ アスランの怒り


「申し訳ありません。でも、今日はどうしてもキャンセルを…。」

電話越しの、マネージャーに向かって詫びをいれる。


今日は本当なら、新曲に向けての練習日。

けれども、キラの体調と精神的ダメージを考えてオフにしてもらった。

本人は平気だと強がっているけれど、その身に受けたショックは計り知れないから。


昨日あのあと、体中の水分を全部出すくらい、キラは泣きじゃくった。

泣いて泣いて、時には叫びのような悲鳴を漏らしていたあいつ。

泣き疲れたキラを優しく寝かし付けてから、俺はそっと家を後にした。



行き先は勿論、キラを傷つけた元凶の所だ。
ムゥ・ラ・フラガ。


キラと付き合っていた男。

 婚約者が出来たためにキラを理不尽な理由で切り捨てた張本人。


(許せない…)


キラは最後まで、自分を理不尽に振った男を責めたりしなかった。


ただ、自分が迷惑をかけたからだとか、魅力がなかったなどと己を責め続けるばかりで。


何でそんなに、自分ばかりを責めるんだ?


キラの話を聞く限りでは、悪いのは向こうの方だろうに。


婚約者ができたから、お前が邪魔になった、別れてくれ…なんて横暴すぎる。キラをなんだと思っているんだ。


 俺は、キラの話を聞いていくうちに腹が立ち、奴を罵った。


だけど、キラは言うのだ。


『僕が悪いんだ、僕が迷惑ばかり掛けてたから…。だから。ムゥさんのことあまり悪く言わないで…』


人のことを気にしている余裕なんて、お前にはないくせに…。


お前は救いようの無いお人好しだよ、キラ。


見ている方が可哀相なくらいに傷ついているくせに。

涙でボロボロなくせに、強がって相手の事ばかり考えて。


 本当なら、こっぴどく振られたなら復讐してやろうと思ってもおかしくないのに。
 

本当に、キラはお人よしでやさしい。

優しいがゆえに、傷つけられてもそれを感受してしまう。

キラが奴を罰せないというのなら仕方ない。


俺がキラの変わりに、動けばいい事だ。


それにはまず、本当にキラが理不尽な理由でふられたのか真相を確認しに行かないと…。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ