短篇&キリリク

□CRSTAL MERODY 二章
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・2・ フラガの心情



「参ったなぁ・・・」


受話器を置きつつ、俺ことムゥ・ラ・フラガは深いため息を吐いた。

ため息の理由は、先ほど掛かってきた電話の内容。


軽い気持ちで、受話器を取ってみれば通話の相手が大手のプロダクションの重役っていうんでびびってしまったが…。

いざ話を聞いてみればそれら全てが吹っ飛ぶほどの有り難い申し出だった。


「しかし、俺と婚約したいなんて女がいるとは思わなかっただけにびっくりだぜ。しかも、相手は社長令嬢ときたもんだ」


そう降って沸いた、ものすごくイイ縁談話。

あまりに突然過ぎて、実は言うと今も戸惑っている。


「でも、これ以上ないくらい美味しい話だし…」


 なんせ、相手の令嬢の会社は大手プロダクションだ。


 そこの重役と、お近づきになれるばかりか、結婚ということになれば、いずれ俺はそこの社長へとなるだろう。


しかも相手の令嬢は、これ以上無いほど美人ときたもんだ。


実際、令嬢と会って話をしたけれど文句の付けようが無いお嬢さんだった。

容姿端麗、プロボーションは抜群で気立てもよければ愛想もある。

それに、栗色の柔らかそうな長い髪も、Fカップはありそうなでかい胸も俺の好みストライクゾーンであるし…。


まさに棚からぼた餅。

盆と正月が一気に来たというくらい美味しい縁談。

これだけ揃っていれば断わる男はいないだろう。


「あの条件は頂けないけどなー。俺が令嬢にふさわしいかどうか監査するってんで、四六時中・・・見張られるってのは。これじゃあ、デートもできないっつーの。」


どんな上手い話にも、裏は必ずある。


俺が令嬢と婚約する為の、条件として出されたのが監査という名の監視。


俺が令嬢にふさわしい人物であるか、仕事面、生活面、全て見張られ監視される。


そんで、少しでも怪しまれれる事が見つかってしまえば、この婚約はおじゃんになっちまう。


俺は芸能界でも女性関係の噂が絶えない色男で通っているから、社長にしてみれば心配なのだろう。


そりゃあ、浮気をするかもしれない奴に、娘をまかせようとする父親なんていないだろうから、当然といったら当然なんだけどさ。


けど四六時中…24時間体勢で、ずっとぴったり見張りを付けるのはやめてくれ…。

本当、怖いんだよ。

振り向いたら、スーツ姿のでかい男が、じーっと見つめてやがるんだぜ?気がおかしくなっちまう。


これでは、プライベートも何もあったもんじゃない。

当然、俺は冗談じゃないと抗議をしたが…。


社長令嬢のお相手に選ばれただけでもよしとしなさいと言って諭されてしまった。

まぁ、仕方ない。
これくらいの苦痛は甘んじて受けるか。


「あーあ。でもこれじゃ、せっかく手に入れたキラを手放す事になるじゃねーか」


ふと脳裏に浮かんだのは、最近付き合いだした恋人のキラのこと。


キラ・ヤマト。


素直で頑張りやで、俺を心から慕ってくれている可愛い奴で、今では俺の恋人だ。


あいつがデビューする前から目を付けて、ようやく手にいれたと思ったところに、婚約話が降ってきた。


監査される以上、当然あいつとの関係も切らねばならない。

男とはいえ、親密に付き合っている相手がいると分かれば、婚約がなくなってしまう可能性があるからだ。


「はぁ…」
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