短篇&キリリク

□CRSATAL MERODY プロローグ
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・プロローグ・


 俺こと、アスラン・ザラは現在売り出し中のアーティストだ。

 俺の両親は、有名な音楽家で、俺自身生まれたときから音楽というものに触れていた。
 その生まれもあって、小さい頃からたくさんの楽器と音楽に囲まれて育った。

 数ある音楽の中でも、歌うのが特に好きだった。


 腹の底からおもいきり声を出すのは気持ちが良かったし、リズムにあわせて声を合わせるのも楽しいと感じた。

 楽しいと感じるまま、俺は歌を歌った。

 ライブや、クラブ・・・ストリート。
歌が歌えれば、場所はどこでもよかった。

 ただ、音楽に触れて、心から歌を歌ってそれが楽しくて…。

 そうこうしているうちに、俺もそれなりに大きくなり、これからどうしようかと思っていた所に、スカウトの声が掛かる。

俺は何でもいいから音楽の道を進みたいと思っていたし、歌を歌って生活するのもいいかと、相談して決めた結果、俺は歌手としてメジャーデビューすることになった。

 新人はデビューしてからが大変というけれど、俺は持ち前の才能と、運のよさで見る見る内に成長し、デビューして一年が経つ頃には、それなりに安定したアーティストになっていた。

オリコンでは常に上位を占めていたし、ライブやコンサートはいつも盛況で、俗にいう売れっ子と言われるまでに上り詰めた。

世間では、そんな俺を成功して満ち足りた生活を送っていると思うかもしれない。



 ―――――だけど、何かが足りなかった。



何が足りないかといえば、上手く説明が出来ないが、兎に角何かが足りないと思った。


俺の歌には、何かが欠けている。


 幾ら、楽譜とおりに完璧に歌い上げても・・・回りから素晴らしいと歓声を浴びせられても満足できない蟠り。

 いくら上手く歌っても、満足できなくなって。

 何が足りないというのだろう。

 自分自身の問題なのに、わからない。

 ただ、自分の音楽に何かが足りないと思うだけで。

 幾ら悩んでも、そのモヤモヤが解消できずに信頼できるマネージャーに相談した。

 すると、意外な提案をされる。


 相棒を持ってみればどうだろうと。


 これまで、1人で活動してきて何か足りないものがあるなら、誰かと共にユニットを組んで見るのも、新しい自分を発見できていい・・・と、彼は言った。

 マネージャーの言葉に、それもいいかもしれないと共感して、俺は誰かとユニットを組む事に決めた。

 そう決めたら決めたで、また新しい問題にぶち当たる。

 ユニットを組むのはいい。


 ――――でも、誰と?


 俺は、自分でいうのも何だがそれなりに才能もあるし実力だって、大手のアーティストに負けない自信がある。

 だから、組むとしたら俺と、それなりに吊りあう奴がいい。

第一、今の若い奴らは歌唱力がなさ過ぎると思う。

碌に歌を歌った事も無い奴がグラビアから成りあがってきたアイドル。

感情を込めすぎて歌になっていない奴、音響監督やプロデューサーの言いなりになって自分の音を持っていない奴・・・。

そんな奴は無論、論外だ。

だが、歌唱力もあり俺の望む条件を兼ね備えた奴・・・今の音楽界にそういない。

俺は来る日も来る日も、それなりに実力のある奴のところへいって適任者を探したが…俺が組みたいと思う奴は一人も見つからなかった。


 本当にパートナーなど見つかるのだろうか。


俺の、足りない何かを埋めてくれる奴など…本当に存在するのか?

 下手に、ヘタな奴の組むくらいならこのまま1人で活動した方がマシではないか。

 そう結論付けそうだった俺に、転機が訪れる。

 近くの小さな舞台で、新人の歌手のステージが行われるとの事で、俺が主賓として招待されたのだ。


 どうせ、新人の舞台なんて見ても詰まらない。


 そう思って断ろうとした。

けど、向こう側がどうしても・・・と頼んでくるので断れずに参加する事になる。


 まさか、これがこれからの俺の運命を変えることになるとはこの時、夢にも思わなかった。
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