小説3
□PURE CHERRY 2章【前編】
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・2・
―――――とうとう、決戦の朝がやってきた。
僕は、お泊り道具を片手に、現在…彼の家の前にいる。
( どうしよう。家の前まで来ちゃったよ。彼に会ったら、どんな顔すればいい? うー…。緊張してきた。)
行く前から、どきどきして心臓がおかしいくらい脈打っている。
昨日なんて、緊張するあまり興奮して全然眠れなかったくらいだ。
「しっかりしなくちゃ…」
こんなに意識していたら最後までもたない。
だって、今日は泊まり出来てるんだから。
何時間も一緒に過ごすのだから。
(どうしよう…)
大丈夫だ、キラ。落ち着け。
自分を落ち着かせる為に、自己暗示をかける。
友達の家に遊びに来たのだと思えばいいんだ。
意識しすぎたら、最後までもたない。
特別に感じなければいい。
リラックス、リラックス…。
そう自己暗示しながら、すぅっと深呼吸をする。
(よし、行こう)
震える指を叱咤しながら、なんとか玄関のベルを鳴らした。
ピンポーンと明るい音がして、彼の声が機械越しに響いてきた。
『はい』
「えっと…その」
ベルを押したのはいいけど…なんて言ったらいいだろう。
友達の家を訪ねるといった経験がないものだから、どう言っていいか分からない。
「アスラン?」
とりあえず、名前を呼んでみる事にした。
『お前、キラか?』
「うん」
『待ってろ、今玄関を開けるから』
そう言われてしばらく待っていると、玄関の入り口を覆っていた柵が、自動に開いた。
「いらっしゃい、キラ」
落着いた広い玄関から、アスランが優しく出迎えてくれる。
彼は、いつもの制服ではなく淡い色合いの私服を着ていた。
(うわぁ…。アスランって何着ても決まってるな)
いつもと違う雰囲気の彼に、しばし見惚れてしまう。
「キラ。どうした?入らないのか?」
「あ…」
そういえば、玄関の入り口で立ち止まったままだった。
言われて、慌てて靴を脱ぐ。
「えと、おじゃまします」
「どうぞ」
(さぁ、ここから、本番だ)
心の中で、そう気合いを入れつつ、玄関に足を踏み入れた。
――――どうか、最後まで僕の心臓が持ちます様に。