小説3

□PURE CHERRY 第一章
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 ――――最近、僕は少しおかしい。

恋人であるアスランを前にすると、上手く思考が働かず挙動不審になってしまう。

それだけじゃない、彼と話してても胸の動悸がどきどきして止まらないし、目を合わすだけでも頬が赤くなってしまったりする。

自分でも彼を意識しすぎているのは分かっているけど、どうやってもそれは止まらない。


今回の騒動の始まりは、確かそんなドキドキからだった。




 


 今、時間はお昼休み。

 僕は、良き理解者であるイザークと昼食を取っていた。

 食堂で買った、サンドイッチとジュースを片手に、この頃思い悩んでいる事を相談している。

 相談事とは、もちろん恋人のアスランとのこと。

僕たち二人しかいない屋上は、恋愛お悩み相談室と化していた。


「つまりだ。お前の話を要約するとだな。最近アスランを見るとドキドキしてまともに顔が見られないんだ、意識しすぎかな、どうしよう…と。そう言いたいんだな、お前は。」


「うん。そうなんだ。ここの所、特に酷くて。どうしたらいいと思う?イザーク」


「どうしようって、お前の問題だろう。それに、言って置くが、俺はお前の惚気に付き合う気はないからな」

「そう言わずに聞いてよ。僕、すごく悩んでるんだから。」

「聞いてやるから、言ってみろ」

「えと…他にも、アスランのことを考えると胸が苦しくなって眠れなかったり…とか」

「何だ、くだらん。そんなのはただの恋煩いだろ?」

「だって…どうしようもないんだってば」


はぁ…と、ため息を吐きながら、手に取ったサンドイッチを見つめる。

本当なら、昼の授業に備えてお腹を満たしていた方がいいのだろうけど…。

なんだが、食べる気が起こらなくて袋の中に戻す事にした。

彼の事を考えると、熱っぽくなってしまって食事も喉に通らない。

ここまで来たら重症だ…と自分でも思う。


「アスランの方も最近、少しおかしくて。やたらと、べったり触って来るし、キスだって…以前より回数が多くなってきて。スキンシップが激しいって言うか」


もじもじと、ストローの端っこを突つきながら小さく呟いていく。


「もちろん、それは僕も嬉しい事なんだけど…。なんていうのかな。アスランは口にこそ出さないけど、それだけじゃ足りないって顔してるんだ。」

イザークは何かを思案している顔で、僕の言葉を聞いてくれているようだった。

「アスランは…その…。これは僕の思いすぎかも知れないけど…僕と…もっと深い事したいみたいで…」


“深い事”というのは、恋人達の甘い営みのこと。
まだやったことがないから良く分からないけど、すごく大胆で恥かしい事なのは分かる。


それをアスランと自分がしている想像をしてしまって、顔から火を吹くごとく真っ赤になった。


「聞いてもいいか?」

「うん、何?」

「アスランと、どこまでいってるんだ?」


あまりに直球な質問に、飲んでいたジュースを思わず吹き出した。

「ごほっ・・・」

「大丈夫か?」


むせた喉を、なんとか落着かせる。

けど、動揺は隠す事が出来ずに声がどもってしまった。

「な、ななな…何でそんなこと…」

「くわしく聞いておかねば、適切なアドバイスができないだろう?それで、どこまで言ってるんだ?」

こういう恥かしい質問は苦手だ…。

でも、言わないとイザークからアドバイスを貰えないし…。

耳まで真っ赤に染めて、小さい声でぼそぼそ呟いた。

「えと…その…まだ、キス…まで」

「何だ。まだ、ヤってなかったのか。奴のことだから、すぐ手を出されたのかと思っていたが。」


呆れたように、深く息を吐くイザーク。

どうやらイザークは、僕とアスランがもうそれなりの仲だと思っていたらしい。

それもそうかもしれない。僕たち、付き合ってから数ヶ月経つんだし…。


「はぁ…。僕たち、進むの遅いのかなぁ。僕、今まで付き合った事なかったからそういうの分からなくて」

「遅いも早いもないだろう?そういうのは本人同士の問題だ。」

本人次第って言ってもなあ…。

僕には、そういう基準が分からないし。

そういえば、イザークはどうなんだろう…。

確か、彼も僕と同じで…幼なじみで親友の恋人がいたはずだ。

似たような境遇だし、聞いておくと何か役に立つかもしれない。
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