小説3
□PURE PINK 六章
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気が付いたら何もない真っ白な空間にいた。音もなく色もない。無色無音の世界。
さっきまで桜の木の前にいたはずなのに。
ここは、どこだろう。
何故か身体が、ふわふわする。
『アスランっ!アスラ・・・』
遠くでキラの呼ぶ声が微かに聞こえる。
しかし、聞こえるだけでその姿はどこにも見えない。
(俺、死んだのか?)
・・・いや、死んではいないだろう。たぶん。
身体に何も異常がなかったはずだから。
それにまだキラと仲直りしてないのに死んでたまるものか。
どうやったら現実に戻れるだろうと考えかねていると、真っ白だった空間から強い光が現れた。
眩く光るそれに、思わず目を瞑ってしまう。
「・・・・・・・・・っ!」
次に目を明けるとそこは、一面の咲き誇る桜と、花びらで溢れた世界。
だけど、その景色は色あせていて、セピア色で統一されている。
(どこだ、ここは。・・・・.何故か酷く懐かしい気がする)
ふと、人の気配がすることに気付いて俺は回りを見渡した。
濃紺の髪の少年と、茶色の髪の少年がぽつんと佇んでいる。
その2人はどちらも見覚えがあった。
あれは、昔の俺?
まだ小さいころの。
小学生の制服を着ているから十歳くらいだろうか。
隣には、亜麻色の髪の少年がいた。
(この子、どこかで見たような・・・)
大きな紫の瞳に、さらさらの茶色の髪。
そして、この儚さといい・・・あいつと、面影が被る。
(小さいころのキラ・・・?俺は昔、キラと会っていたのか・・・)
『約束だ。大きくなったらあそこで…』
どうやら、再会の約束を交わしているみたいだった。
(約束・・・。キラがいってたのはこのことか)
風に遊ぶ栗色の髪。
見上げた瞳から涙が落ちかけていて・・・。
(・・・泣くなよ。お前が泣くのは苦手なんだ。)
ちりちりと胸が痛む。
俺は、そっと小さいキラの頭を撫ぜようとした。
けど、手が透明に透けて触れる事が出来ない。
『絶対僕のこと、忘れないでね』
キラは、泣きながら小さい俺に言った。
その言葉を俺はどこかで聞いた気がしてならない。
(忘れないで・・・って。俺は・・・・)
ずきんっ。
また頭痛がした。何かが胸を突き抜ける。
(キラと別れる前にした約束・・・・)
散らばっていた記憶の破片が蘇ってくる。
あと少しで何か思い出せそうな気がしたのに、そのとき突然、場面が変わった。