小説 2

□DAY BREAK 4章(1-3)
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・4・ 混迷


 
コミュニティの命令に従うフリをして、キラを探しに旅に出た。

キラを滅ぼせだなんて、指令など冗談ではなかったが何せ、今まで何もキラの手がかりが無かったのだ。

 何でもいい、キラにもう一度会えるなら…、そう自分に言い聞かせて進む事にする。


「ここが、キラによって被害を受けた村か・・・」


古びた小さい村。

コミュニティの話では、キラがここを襲ったという事だったけれど…真相は、調べてみないと分からない。

彼らの話を全部、丸呑みするほどコミュニティを信じてはいなかった。


さて、これからどうするか…。


調べるにしても、真っ正面から捜査すれば怪しまれるだろうし。まず、村人に話を聞いてみるか。

そんなことを考えていると、ふと可愛らしい声が聞こえた。


「おにいちゃん、おにぃちゃん。」


何だろうと声のした方へ向けば、俺の腰の辺りで小さい女の子がちょこんと立っている。


「どうしたの?さっきからぼーっとして」


髪を二つくくりにした可愛らしい少女だ。

俺が、村の入り口で立ち止まっていたから不信に思ったのだろう。


「いや、ちょっと考え事を…。君は?この村の子?」

「うん、エルね。ここに住んでるの」


どうやら、村の子供のようだ。

にっこりと微笑む少女は、まだ幼さを残している。屈託ない笑顔に、あいつの面影を見て切なくなった。


「おや、エル。どうしたんじゃ?その方はお客人かい?」

「あ、おじいちゃん。あのね、このおにぃちゃんがここでぼんやりしてたから、声をかけたの」


エルと、呼ばれた少女の後ろから、白い頭の老人が姿を見せた。
顔かたちは似ていないけれど、瞳の色が同じだからきっと、この少女の祖父か何かなのだろう。

老人は、少女に歩み寄ると優しく頭を撫でてやった。


「そうか偉いぞ、エル。」


女の子はそれに満足げに笑うと、老人の横にちょこんと座る。


「さて、お若い方。どうしたんじゃ、見たところ旅のお方のようじゃが…この村に何かご用でも?」

「こんにちは、御老人。俺はアスランといいます。人を探してこの村に来ました。この辺りで見かけたという情報があったものですから」

「ほう、こんな寂れた村に探し人とな。」

「ええ、長い間探している者が、この村で見掛けたという情報があったものですから」

「ほう…。お若いのに大変じゃのう。そうじゃ、その探し人の特徴を教えて下さらんか?何か、力になれるやもしれん」

「ありがとうございます。ええと、背格好は俺と同じような感じの少年で…。特徴は、紫の瞳に茶色の髪。顔立ちは東洋系で、穏やかな…」

そこまで言えば、相手は僅かにぴくりと反応が返ってきた。

「紫の瞳に、茶色の髪?」

「名は、キラというのですが…」

「キラ…?」

名前を出した途端、明らかに老人の顔色が変わった。
その反応に手応えを感じて、希望が出てくる。

「知っているのですか?」

「知っているも何も、エルたちの恩人よ、キラさまは」

「恩人?どういうことです?キラはこの村を襲ったと聞いていたのですが…」


「確かに、キラ様は村を襲ったと言われるようなことをなさいました。家屋を破壊し、人を傷つけなさったが…それは全部、我々村人の為だったのです」

「キラさまはエルたちのこと助けてくれたのよ」

助けた?
それは、どういうことだろう。

聞いていた事と随分違った事を言われて戸惑った。
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