小説 2
□DAY BREAK 1章(1-6)
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・プロローグ・ 序章
闇を生きる、孤独な人種。
生き物の生き血を吸い、それを糧とする僕らは吸血鬼と言った呼び名で呼ばれている。
そして、人間と僕らは敵対関係にあった。
僕らは、人に忌み嫌われ迫害されているから。
どうして、僕らは人と相容れないのだろう…。
人間が思うほど、吸血鬼は万能なわけじゃないし、また狂暴なわけでもない。
僕らは本来性格も穏やかで温厚、争いを好まない。
それなのに、ただ血を吸うという特性の為だけに軽蔑され、疎外される。
人間だって、生きるために動物の肉を食べるじゃないか。
僕らにとって身体を維持していくそれが、血液という形なだけで。
昔は、それでも共存できていたらしい。
吸血鬼は、人にはない魔力と能力で人間を助け、人間はそんな彼らの為に血をエネルギーとして提供した。
だけど、それは過去のこと。
今は、吸血鬼は、人に追われ狩られる時代。
こんな世の中だから、僕達はとても数が減っていた。
だから、回りに誰も仲間がいないし、助けてくれる人も頼れる人もいない。
ずっと、僕は一人ぼっちだった。
孤独は嫌いだ。
一人も嫌い。
かといって、人間も好きじゃない。
僕はこのまま、ずっと一人で生き、死んでいくのだろう。
そう思っていた。
―――――彼に、出会うまでは…。
■+ DAY BREAK +■
・1・ 混血
―――その日、穏やかなはずの街は、危険な修羅場になっていた。
「消えろっ!化け物めっ!」
そんな大声と共に、兵隊の格好をした男が、大きく叫びながら剣を振りかざして突っ込んできた。
人間の兵士が、振りかざした白刃の剣撃。
それが、自分へ当たる前に寸前のところでよける。
身体を捻らせてよけたから、傷を負った箇所がじくりと痛んだ。
「愚かなる吸血鬼に死を!」
今度は、別の男が僕に攻撃を仕掛けてきた。
除けるまもなく、あっという間に囲まれる。
もう逃げ場がなくなり、後がなくなった。
「……っぅ!」
傷口から、ぽたぽたと血が流れて地面は赤く染まっている。
この出血量では、早く治療しないと命が危ない。
こんなところで、しかも人間の兵士にやられるわけにはいかなかった。
目の前には、自分を殺そうと狙う何人もの男が集まっている。
見回せば、ざっと20人はいるだろうか。
いつもの状態ならともかく、怪我をしていること状況では、とてもじゃないが彼ら全員を倒すことはできそうになかった。
やむ終えない。
ここは、一度引くべきだと判断して逃げるための策を講じた。
まず、痛みを遮断するために軽く目を閉じる。
それから、手の平に気を集中させた。
普通の人間には備わっていない力。俗に言う魔力というものだ。
大きく魔力を膨らませていく。
そして、ありったけのエネルギーを指先に込めて地へとぶつけた。
「うわぁぁっ!」
その瞬間、あたりは黄色い火花でいっぱいになって。
そうして、ぱぁんっと大きく光が弾けた。
「くっ……」
そこに残ったのは、白い煙と僅かな光の粒のみ。
「ちっ…逃げられたか!」
「奴は深手を負っている。まだ近くにいるはずだ!探せっ!」