小説 2
□DEEP BLUE 二章 (1-6)
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・2・転機
急いで駆けつけた病院。
ディアッカに情報を聞いてから、すぐに駆けつけたとはいえ、もう時間は深夜を回っていた。
突然、知らされたテロの情報。
テロの発生場所は、キラ達が身を寄せているマルキオ導師の光の家。
俺も、しばらく身を寄せていたそこが、襲撃されたらしい。
それを始めて聞いたときは、我を忘れるくらい取り乱してしまったものだが、いざ冷静に戻って聞いてみればそんなに大掛かりなテロではなかったみたいだ。
主犯はブルーコスモスの残党とのことだ。
何処から嗅ぎ付けたのかは知らないが、随分と愚かな事をするものだ。
今回は、大した事がなかったからよかったが、もしキラになにかあったら・・・俺は犯人達を全員虐殺していただろう。
――――キラは、大丈夫だろうか。
さっき連絡を取った時点では、怪我もなく無事だということだった。
機械越しに伝わる声は思ったよりも大丈夫そうで、ほっとした。
だがキラと一緒にいた女性が重体だという。
前に会ったフレイヤという少女だろう。
キラの恋人の・・・。
キラのことだから取り乱したりしていないだろうか。
優しいあいつのこと、大事な彼女が傷ついていたら冷静にはいられないだろう。
でも、そんな心配無用かもしれないな。
キラはあれでいて、しっかりしているから。
昔は、少しのことでもココロを痛めては泣いて立ち直らせるのに苦労したものだ。
時間外で誰もいない廊下を早歩きで渡る。
一刻も早くキラに会いたかった。
会って安心したい。
無事だと聞いたものの、姿を見るまでは安心できない。
緊急の窓口に来た俺は、きょろきょろと回りを見渡した。
キラはどこだろう。
まだここにいると聞いたので来て見たのだが、もしかして帰ってしまったんだろうか。
そんなことを思ったとき、ふと先に人の気配があることに気がついた。
非常用出口の赤いテールランプの光。
それ以外は、照らすモノがない薄暗い闇の中で、ひとりの人物が待機用の椅子に座って俯いていた。
酷くやつれた人影。
先日見た笑顔の欠片も見出せないその人物は、大事な幼馴染その人だった。
「キラ・・・?」
思わず名前を呼ぶ。分かっているけど、その人物が誰か確かめたくて。
何故なら、キラを特定できないほどその人物は前と風代わりしていたからだ。
「アス・・・ラン」
か細く返ってきた声は間違いなくキラのものだった。
「アスランっ!来てくれたんだ」
これは、どう言う事だろう?
キラは、怪我も無く無事なのでは、なかったのか?
暗がりから覗く顔はとてもそんな風には見えない。
顔色は悪く血の気が引いていて、医者の診察が必要なんじゃないか、という位やつれて見えた。
「当たり前だろ?それよりお前、大丈夫なのか?すごく顔色が悪いぞ。」
「大丈夫・・・。僕は元気だよ。ただちょっと疲れているだけ」
明らかに嘘だと分かる言葉。
きっと、俺に心配かけたくないのだろう。
「とてもそうは見えない。本当に大丈夫か?」
なるべく柔らかく、キラの頭を撫でてやる。
その動きに今まで耐えていたものが切れたのかキラは取り乱し始めた。
「僕の彼女が巻き込まれて・・・。・・・っ・・・」
「おいっ?キラ。どうしたんだ?どこか、怪我でも・・・」