小説 1
□Puple Olion 第三章(1-6)
1ページ/6ページ
・3・ 時が動くとき
一月に一度、キラさんは買出しをしに島を出る。
この島には当然、マーケットなんてないから生きていくのに必要な食料は、外から持ち込む必要があるからだ。
俺もキラさんも少食であまり食べないとはいえ、食料は生活するのに必要不可欠なものだ。
多少は、島で取れる自然の恵みのおかげで何とかなっているけれど、やはりそれだけでは育ち盛りの男二人には辛いものがある。
だから、この月一度の買い出しは欠かせないものなのだ。
「それじゃ、いってくるね。」
「気を付けていって来て下さいね。本当なら俺も着いていきたかったんですけど」
「大丈夫だよ。今回の当番は僕なんだし。買い物くらい一人で、できるよ。シンは心配症だな」
それりゃあ、心配するよ。
だって、キラさんてば俺より背は低いし非力だし可愛らしい顔しているし…。
本当なら、一人で買い物に行かせるのなんて危なっかしくて変わりたいくらいだ。
「あ、そうだ。行く前に…と。はい、これ、シンにあげるね」
そういって、渡されたのは、一冊の雑誌。
若者が好みそうなタイプのそれを、渡されたのはいいけれどこれがどういうものなのか分からなくて首を傾げる。
「これ、なんですか?」
「この前に買出ししたときに、買った雑誌なんだけど、素敵なものが載っているんだ。見てごらん?」
素敵なもの…?
なんだろうと思って、ぺらぺらページを捲る。
ページを捲っていた手は、とあるものを見つけてピタリと止まった。
ザフトを特集する記事。
若者向けの雑誌らしく若い兵士の紹介やインタビューなどが特集されていた。
中でも特に目を引いたのは、懐かしい金の光。
「これっ!?」
「余計なお世話かもだろうけど、顔を見たいんじゃないかな…って思ってね。せっかくだから、君にあげようと思って」
そこに写っていたのは、俺の心深くに住む誰よりも大事な同僚の姿。
(レイ…)
写真の中のレイは、記憶の中にあるレイよりも成長していた。
育ち盛りだし、1年なんて長い期間、顔を見なかったのだから多少違うのもしょうがないけど・・・。
なんていうか、すごく大人びたし、綺麗な顔がさらに綺麗に整っていて。
なんていうか、大人の男になっていた。
「じゃあ、行って来るね、シン」
「え?あ、は、はい…。」
うっかり写真に魅入っていた俺は、その言葉ではっと我に返った。
そうだ、キラさんをお見送りしないと。
「いってらっしゃい、キラさん」
苦笑しながら買い物へ出かけた彼を見送って、また貰った雑誌を手に取る。
何故か、レイの映る雑誌から目が離せないでいた。
レイか…。
いつも、破天荒な俺のストッパーになってくれたし、辛いときはさりげなくフォローしてくれた。
クールだけど、実はとても優しい一面があるのを知っている。
そして、俺のことを必要だと言ってくれた。
熱いまなざしで告げられて胸がいっぱいになったのを覚えている。
確かに、会いたいかもしれない…。
あいつ、今どうしているんだろう。
今まで、自分の事でいっぱいだったから、考えないようにしていたけれど。
今は、無性にあいつに会いたいと思った。
何も言わずに姿を消した俺を、探してくれたのだろうか。
だったら、いいのに…なんて勝手な事を考えながら、懐かしい面影に想いを馳せた。