創作本

□星の精
1ページ/5ページ


一人、少年が居た。

少年は星が好きだった。いつも小高い丘で、一人夜空を見上げていた。

少年に身寄りは居なかった。両親は早くに亡くなり、唯一の肉親であった双子の妹はつい先日、忽然と姿を消した。生死も確認出来ていない。しかし、少年は寂しいと思うことはなかった。確かに“人”としては一人だったが、少年の周りは賑やかだったのだ。


「やあ、今日も来たの」
『もちろん』


ふわり、どこからもなくやって来た光が少年の問いに答えた。それは段々と形を成し、青く輝く人影になった。光は一つではない。全てで十一の光。老若男女様々な人型に変わったそれらは、少年を囲って優しい笑みを浮かべた。


『君のことが気になっているからね』
「僕は平気だよ。皆がいるもの」


少年は彼らがなんであるか、どうして自分の元にやってくるのか、ということを詮索しなかった。そして、彼らも何も言わなかった。ただ、この出会いは必然で、必要なことだったから。それだけだった。



夜の間、少年は光達と話して過ごす。他愛な話で盛り上がって、いつしか少年は眠りにつく。十一の光はそれを見守る。そして朝、少年が目を覚ますのは少年の家。はじめは夢ではないかと疑っていたが、毎晩丘へ上る度に彼らに出会えるものだから、現なのだと確信した。たとえ出会った彼らが、幻だとしても。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ