ささやかなことば
□過去拍手A
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坂田さん
「こんにちはー」
お昼過ぎに万事屋の扉を開ける。
いつものこの時間帯なら、新八君がお買い物に出掛けていても、必ずと言っていい程銀さんがいる。
三人が依頼などで出掛けていても、定春くらいはいる。
でも今日は銀さんがこの時間帯に来てと珍しく言ってきて。だから何かあったのかと思ってやって来たのに。
万事屋の中はしんと静まり返っていて。定春寝てるのかな?それとも神楽ちゃんとお散歩かな?なんて思いながら、靴を脱いで上がる。
居間へ続く扉を開けてももの抜け殻。
ただ違うのは、どこか甘ったるい匂いが充満している。台所を覗くが、洗うべきお皿が積まれているくらいで、特に変わりはない。
「不用心だなぁ…鍵開けっ放しで…」
「いやー俺居るからね」
「うひゃあ!」
急に誰もいないはずの後ろから声が聞こえて体が跳ねた。
「びっくりした?」
「びびびっくりなんてもんじゃないよ!心臓が飛び出るかと思ったよ!」
ドキドキとうるさい心臓を手で押さえて銀さんを振り向いた。
「まあまあ座って」
そう言ってソファーに座る銀さんの手には、可愛い苺のホールケーキ。
促されるままに銀さんの向かい側に座る。
「銀さん、そのケーキどうしたの?誰かの誕生日だっけ?」
「んー?違ェよ。でも俺の手作り」
…手作り?!これプロ級だよ!めっちゃ可愛いんだけど!
「そんで、これお前のな」
ケーキをテーブルにおいてフォークにケーキをちょこっと刺す。
ん、とフォークを差し出して銀さんはニコニコ笑う。
「え、え、私に?っか何?」
「ここはアレだよ、あーん」
ほら口開けて、と言わんばかりにフォークを近付ける。
「っ〜…」
恥ずかしくて仕方ないが、銀さんがフォークを近付けてくるため、反論は出来ず、パクリと一口。
一気に口に広がる生クリームの甘さ、苺の酸っぱさ。
「……おいしー」
「だろ!銀さん手により掛けて作ったんだぞ!……
…こんなんしか、銀さんお前に返せねーけど、これからも宜しくな」
ホワイトデーに、甘いお返しを