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□木漏れ日のにおい。
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陽射しがきらきらと輝く午後。
啓太と共に生徒会室を訪れた俺は、例によって例の如く、中嶋さんに王様探索を命じられた。…まあ、いつものことだけど。
仕方ないなとため息を零して出てきたものの、明るい太陽の下を歩いていると、王様の気持ちがほんのちょっとだけ、理解らなくもなくなってくる。
―――木陰で昼寝でもしたら、気持ちいいだろうな。
俺の脳裡をも掠める、ささやかな誘惑。王様がそれに勝てなくても、無理もない。
神出鬼没の王様の居場所なんて想像がつかなくて、思いつくまま、生徒たちがまず近付くことのないサーバー棟辺りまで足を伸ばしてみると。
―――いた。
大きな木の下。柔らかな芝生の上に、大の字に寝転んでいる生徒会長。
「王様、王様起きて下さいよ、王様ってば」
肩に手を置いて揺さぶっても、「んー……」なんて寝ぼけ声が返ってくるだけで、本人が目覚める気配は微塵もない。
……もうちょっとだけ、許してあげようか。
起きている時より幾分幼い表情で眠る彼を叩き起こすのは、何だか忍びなくて。
俺も、王様の隣にごろりと横になった。制服が汚れるとか、今は気にしない。
目を閉じると、葉っぱに遮られた陽の光が瞼越しにちらちら踊る。
俺は、優しく頬を撫でていく微風を、胸いっぱいに吸い込んだ。
―――あの時と一緒だ。子どもの頃、あの子と遊んだ大きな樹。みどりの風、木の葉の囁く声、……木漏れ日のにおい。
尤も、あれは今よりずっと暑い季節だったけれど。
しあわせ、って、今みたいな気持ちを言うのかな。
頬が緩むのを感じながら、俺は葉っぱの隙間から零れ落ちる光を見上げていた。