霰の夢水晶

季節の温もり
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「カーティス大佐!!
大変です……陛下が……陛下がいないんです」



自分を呼ぶ声がしてジェイドは振り向いた


今、ジェイドは自分の私室に向かう為に城の中の廊下を歩いていた


兵士が住む宿舎へ向かうにはまず、城の外に出てから向かわなければならない

少し面倒だが、ジェイドは向かっていた
そこで、ジェイドは呼び止められたのだ


ジェイドを呼んだのはフリングス将軍だった


フリングス将軍は血相を変えてジェイドに頼んで来ていた





「……陛下の私室にもいないのですか?」



「はい、この資料を今日中に目を通して頂きたいのですが……」



ジェイドの溜息混じりの言葉に、フリングスも溜息を付きながら言う



フリングス将軍の手には数枚だが、資料と思われる紙を持っていた


ジェイドもジェイドでピオニー陛下に確認しておきたい事項があるのだ


いつも肝心な時にいない……
それがピオニー陛下だった



「分かりました、見付かり次第連絡致しますのでフリングス将軍も引き続き陛下を捜して下さい」



「お願いします」



ジェイドの言葉に頷きフリングスはジェイドに言う

そして、ジェイドの向かう方とは逆方向へと走って行く



フリングス将軍がいなくなり、ジェイドは溜息をついた
ただでさえ忙しいのに……
今だって私室の机に忘れた資料を取りに行くだけなのに……いらない仕事が増えてしまった




「やれやれ、このマルクトの将来が心配ですねぇ」




苦笑混じりにジェイドは言う
このマルクト帝国を治めているのが現皇帝のピオニー陛下なのだ



そんな陛下が陛下だからこのマルクトの末が心配だと言う事だ




「まぁ、陛下ですからね」



クスッ、と苦笑しジェイドは言う
だが、あれでも皇帝としての威厳や器はある


だからこそ、今でも皇帝として君臨しているのだ



ジェイドは認めたくなくとも、その事実を知っている

だからこそピオニー陛下の懐刀として……幼馴染みとして、彼のサポートをしているのだ



まぁ、本当の理由など言えるはずもありませんが……
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