小説

□ハニーハニーラヴァーズ
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「大丈夫なのか?ナルト」
そう声を掛けられて…えっ?とナルトは振り返った。
リビングのテーブル。自分の席の向かいに座っているサスケから発せられた、その台詞の意味が今イチ掴めずに…ナルトは首を傾げる。
「大丈夫…って?何が?」
スープ皿を運んでサスケの前に置きながら、ナルトは聞いて見た。
「声、ちょっとかすれているぞ。風邪でも引いたんじゃねェのか?」
そう言いながら、昨日雨に濡れて帰って来たナルトの事を、サスケは気遣ってしまう。
黒すぐりの実を森の奥まで取りに行ったナルトは、大量の果実を持って帰って来た――来たのは良いが、夕立に合い、びしょびしょの状態で家に戻って来たのだ。
もちろん、すぐにタオルで水気を拭い、温かいシャワーを浴びさせた。
それどころか…何時もより、早めに寝かし付けもしたのだ。
一緒のベッドに入りたいのも…、ぎゅっと抱き締めて眠りたいのも――我慢して。それこそ、理性でもって。目っ一杯、最大限の『我慢』でもって。



ナルトは自分の分のスープ皿と、パンの入った小さなカゴをテーブルに置くと、椅子に腰掛けた。
「大丈夫だってばよ!ちょっと喉痛いだけだし」
そう言ってにっこり笑う。もぞもぞ、くすぐったい様な幸せ。サスケが自分の事を気遣ってくれてるってだけで、ひどく嬉しくなって。
とびっきりの笑顔をもう一度。
「全然、平気だってばよ!」
「そ、そっか。なら良いんだ…」



一方――そんなナルトの滅茶苦茶可愛らしい笑顔に、サスケはドギマギしてしまう。自分に取って、世界一可愛い、目の前の恋人の笑顔は…何時でも『爆弾』で有ったりするから。
「あっ、スープ冷めちゃうってば。ご飯食べよ」
「ああっ」
二人で一緒の朝ご飯に。



『いただきます』



朝の食事を終え、皿洗いの終わったナルトの前に、サスケから小さな黄色いフタのビンが手渡された。
「えっ?何コレっ?サスケ」
「この前、奈良ん所から貰って来た蜂蜜だ。喉にはいいからな」
――直接舐めても良いし、飲み物にしても良いから。それを口にして、今日は大人しく家に居ろと…サスケはナルトに告げた。
「暑くなってきたし…体調を崩しやすくなるからな。症状が軽い内にキチンと直しておけ」
ナルトの手の中の黄金色の物。生来、甘い物が大嫌いなサスケには薬になる物だとしても、全く要らない蜂蜜。それをわざわざ手に入れたのは――ただ、ナルトの為。
そんなサスケの気持ちが分かって。また、どうしようもないくすぐったい感情に、ナルトはふわりと笑う。
優しさが嬉しくって。それが自分に向けられている――自分にだけ向けられていると、最近ようやく分かったナルトは、素直にコクンと頷いた。
「うん…ありがとってば、サスケ。これ飲んで大人しくしているってば」
あっ、でも…とナルトは何かを思い出した様に、サスケを見つめる。
「お願いしたいコト有るんだけど…良いってば、サスケ?」
この蜂蜜を貰ったシカマルに頼まれていた薬草。昨日、黒すぐりを摘んだ場所でたくさん見つけたから、取って来た。
「シカマルに届いて欲しいな…って、ダメ?」
「ああっ、分かった。どうせアソコで薬買って来るつもりだったからな。ついでに持って行ってやるよ」
「本当っ?ありがとってば、サスケ」
お礼にチュッと頬に一つ、可愛いキスをプレゼント。
ほのかに顔色を赤くするサスケ。そして、そんな行動を起こしたナルト自身も赤く頬を染めて。
そしてくるりと身を翻した。
部屋の片隅に置いてあった、白い袋をサスケに手渡す。
「これ…じゃあ頼んだってばよ」



――こんな楽な『お願い』で、あんな可愛い行為してくれんなら…そりゃもう、幾らでもっ!!
――…と、『内なるサスケ』が大絶叫していたなんて、コトはナイショにしておいて。
「じゃあな、ゆっくり寝ていろよ」
「うん、分かっているってば。気を付けてね」
――で、『行ってらっしゃい』『行って来ます』。
もちろん、オプションのキスは忘れずに。
なんて言ったって、恋人同士だし。
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