小説
□名前
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「ねぇ、多串くん」
ふと銀時は土方に声をかけた。
「あ?」
土方は読んでいる新聞から目を離さず、いつもの無愛想な声で返事をした。
「多串くんってさー…俺のこと、なんて呼んでるっけ?」
「ん?…万事屋。」
先程と同じトーンで答える。
「じゃ、ヤってる時は?」
少し顔を赤らめながらやっと顔を上げる。
「アホか…//…坂田」
恥ずかしがりながらも答えるところが真面目な土方らしい。
「だよね…うん。銀さんそれが納得できないの!!」
一人で何か確かめる様に呟くといきなり大声を出した。
「何が納得できねーんだよ…」
声の大きさにビクッと肩を竦め、意味が分からないといった感じで土方は銀時を見やる。
「だからね!!多串くんは俺のこと名前で呼んでくれてないの!!俺たち付き合って間もないラブラブカップルの時期じゃないの!!?」
土方に近付き肩を掴むと、訴えるように叫んだ。
「うるせぇ!!ッ近くで大声出すな!!
だいたいテメェだって俺のこと"多串"って呼んでるじゃねぇか!!」
「俺はヤってる時名前で呼んでますー。トシ、とか…十四郎、とか。いっつも言ってるよね?
え、聞いてないの!?ちょっと…銀さん悲しいッ!!」
泣いたフリをしながら土方の肩に顔を埋める。
「…それはお前が勝手に「俺のこと好きじゃないの?」
土方の言葉を遮る様に銀時が話しだす。
「多串くんさ…俺のこと好きじゃないんでしょ。俺だけが多串くんのこと好きなんでしょ。」
本当に泣きそうな表情で土方からそっと離れ土方に背を向けて座る。
「俺はこんなにもトシのことを愛してるのにさ…」
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