★無重力感覚讀物★
2008.6

《天の川の岸辺》

傍らで眠る君の闇。
長い髪。
そのつむじを真横から
僕はあの夜初めて眺めたんだ。
忘れもしない。
僕は確かに銀河を見た。

恐ろしい発見だった。

君の頭のてっぺんは
とこしえのひかりの国。
止まない輝きの源泉で
爆発を起こしていたんだ。

こんな薄い胸板には抱えきれない数の
魂を髪に巻きとって
君はそれを河に流していた。

こんなに近くに居たはずの君の
遥か果て
僕は内側に立っていたんだ。

意味がわかるかい?

知らなかったよ。
悔しいよ。
慰めてよ。

爆発は終わらない。

君の河。
ひかりの渦。
天の川。

僕は河のずうっと下流の
その岸辺で
ただ唄っているんだ。
火傷しながら
ひかりをポケットに拾い集めて
唄い続けるんだ。

僕と君とひかり。
それは
この宙という時間の暗黒に浮かんで流れていく
ひとつの円盤なのさ。

君の頂上に
天は確かに存在していて
キラキラ
キラキラ
流れ落ちているんだ。
それを浮力に
君は飛べるのさ。

知らなかったよ。
悔しいよ。
慰めてよ。

渦に巻かれて
飲まれても
それでも立ち上がり続けるよ。
円盤の内側で
ひかりの国を想って唄うのさ。

君は銀河。
僕の銀河。
ひかりの岸辺。

天の川。


《天の川の岸辺》
さいとう みさ

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