★無重力感覚讀物★
2008・4

《掌にブラックホール》

究極の願望は
ブラックホールをこの掌に握ること。
圧縮された宇宙最高の黒。

漆黒の闇より強烈に輝き
貴方の濁りない瞳よりも鋭利で
七色の光の混色を唯一可能にする
世界の最終形態。

掌に飛込めば
光と体は溶け合える。

恐怖と悦楽を区別しない鮮やかなる黒の天体。

時間は皆無。
認識は五感を超える。

音を吸い込む鼓膜は裂けて
圧縮された波長の音楽を刻む。
瞳孔に映る現象は
光速に追い付き
その先の次元を見る。
皮膚と骨は性感帯に変化する。

ぢりぢり、ぢりぢり、ぢりぢり、と。

過去が未来と重なり合って
今だけが絶対となる高密度な事象。

無の中に核があって
核が全てで
全てさえも無となる。

重力崩壊の地平線!

それをたぐり寄せるのは
あたしの仕業?

仕組みを知れば
貴方もあたしも抜け出せない。
小さくとも密度は無限大。

闇を超え
熱く燃え。

ひとつでいられる。

掌に
堕ちる。



《掌にブラックホール》
さいとう みさ

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