「ちょっちょっちょっちょっちょっと待って!!」
恋人の雰囲気満載のはずのこの状況で、私は色気もへったくれもない声を出した。
好きなんです、あなたのことが。だからいいですよね?
ちょっと待って。私には今の状況がよく分からないわ! 頭の中、順を追って整理するからちょっと待ってて!
そういえば、目の前の彼、骸はええ、いいですよ。とお得意の紳士的な微笑みで答えた。
さて、今はいつ?
今は学校が終わった夕方。
どこで?
父親も母親もいないという少しうれしい状況の家。さらに言えば、その家の私の部屋のベッドの上で。
誰が?
私が。
誰と?
誰とというより骸に。
何をした? じゃなくて何をされた?
押し倒された!
ってよくよく考えなくても、かなり危険な状況じゃない!
「頭の整理はつきましたか?」
笑みは崩さぬまま、問いかける骸。整理はついたけど、理解できないわ! というよりしたくない。
「タンマタンマ」
目の前の胸板をできる限りの力で押す。が、悲しいことに非力な私には骸を押し返すだけの力はなかった。
「もう十分待ちましたよ」
これ以上待てません。
そう言って、私の胸に手を添えた。
「おや、ものすごい速さですね」
心臓。
当たり前だ!
叫んでから、強行突破だ! とおでことおでこがごっつんするのを覚悟で、勢いよく起き上がる。その作戦は大成功のようで、おでこがぶつからなかった上に、ベッドの上に座りこむ2人。
「……そんなに嫌ですか?」
少ししゅんとした様子で尋ねられれば、YESとも言えないじゃない。いや、もともとYESではないけど。
「僕が嫌いですか?」
「そんなわけない!」
そんなこと、あるわけないじゃない! 骸のことは好きよ。だから付き合ってんだもの。
それに本当に嫌だったら、もっと本気で抵抗してるわ。
「僕も」
少し伏目がちに骸は私の手首を掴んだ。それからドサッとベッドに逆戻りした私と骸。
「好きなんです、あなたのことが。だからいいですよね?」
今度こそNOと言えなくなった私は、頷くしかなかった。
10/12/29