リボーン短編2
□理想
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「私ね、彼氏ができたら制服デートするのが夢だったんだ」
学校帰りにいろんなお店を見たりとか、お茶するだとか。そんなことじゃなくても、手を繋いで商店街を歩くとか。そんなことでいいから、制服デートをしてみたい。
そう言うと、隼人は何をいきなり、と私の方を向いた。
「手ぇ繋いで、たくさん歩き回るの」
もちろん恋人つなぎで。そう付け足して、自分の手を見る。
「それからね、お揃いのストラップとか買って、そのストラップだけ2人でつけるの」
見ていた手をぶらんと横に落とす。その衝撃ブレザーのポケットに入ったケータイのストラップが音をたてた。
「お店を見た後はクレープが食べたいなぁ」
私はいちごのがいいな。そんなことを思っていると、お腹が空いてきた。
「でね、口についたクリームを取ってもらうの」
私、不器用だからそんなにうまく食べれないと思うの。だからついてるよって言って取ってもらいたい。
なんて、本当にやったら相当恥ずかしいだろうけど。
「その後は公園で日が暮れるまで話すの」
尽きない話題に、時間も忘れて話す。話題は何でもいいんだ。今日の授業のことだったり、テレビのことだったり。ただ2人でいられれば。
「真っ暗になったら、家まで送ってもらうの。で、別れ際にバイバイのキスをするの」
これが私の理想。というか夢。こんな風に慣れたらなぁっていう夢。夢だった。
「……それはそうしてほしいってことか?」
隼人は若干困った顔をして言った。それに首を振る。パタパタと髪の毛が頬に当たった。
「ううん。理想って好き勝手思い描くけど、結局は隼人がいればそれでいいってことに気づいたの」
理想が実現すればそれはそれで幸せだろう。でも……。
「隼人がいれば、それだけで幸せだから」
理想どおりじゃなくったて、幸せだ。隣に隼人がいるから。
「……恥ずかしい奴」
黙って聞いていた隼人は、少し顔を背けた。それからきゅっと指が絡められた。
隼人がいれば理想なんてどうでもいいわ!
09/09/07