リボーン短編2
□最後はあなたと抱擁を
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「ねえ、隼人」
大きな鏡の前でネクタイを結ぶ隼人を呼ぶ。
赤いワイシャツに黒いジャケットとネクタイ。隼人が何かあると、決まってするその格好。胸元にはボンゴレと、嵐のエンブレムのピンが止まっている。
「……なんだ?」
振り返った隼人に、今の自分の姿を思い出した。途端に恥ずかしくなって、シーツを引き寄せる。
「もし、明日には世界がなくなっているとしたら、どうする?」
隼人は一瞬、面喰った顔をして、私の方に歩いてきた。
きっちりと着られたスーツに、まっすぐ私を見つめる瞳。がらにもなく、心臓が高鳴った。シーツをぎゅっと握る。
「どうした? 突然」
ぎしりとベッドが鳴る。それから、ひんやりとした手が頬に添えられた。
突然、なんかじゃない。今、私たちボンゴレはミルフィオーレに狙われている。次々と友人、知人たちが消されていく。そんなボンゴレ狩りは今、この時も進行中だ。
このアジトだって、今に見つかるかもしれない。要するにいつ、殺されてもおかしくはない状況なのだ。それに……。
添えられた手に手を重ねる。それから首を横に振った。隼人は首を傾げた。
「私は」
もし、世界が明日で終わるなら。明日には隼人と会えなくなるならば、
「隼人と抱き合って、キスして……そのまま終わりたいなぁ」
最愛の人と抱き合って、最愛の人とともに終われるなんて、これ以上の幸せはないんじゃないかしら。
世界の最後が隼人だなんて、隼人の最後が私だなんて、もう言うことはないわ。
なんて、欲張りかしら?
きっとろくな死に方はできないことは分かってる。でも、少しくらいの欲張りは許して? だって……。
「……ごめん」
小さくて聞こえるか聞こえないかの隼人の呟き。たしかに私の鼓膜を揺らした。それから抱きしめられる。
いつもの隼人の香水の匂いはしない。たばこのにおいすらしない。どうして? どうしてよ?
ゆっくりと唇が押し当てられる。触れるだけの、長い長いキス。
ああ、窒息してしまいそうだわ。
スーツの背中をぐしゃりとつかむ。しわになってしまえと言わんばかりに強く、強く。
いっそ窒息してしまいたい。
すっとぬくもりが遠ざかっていく。名残惜しいけど仕方ない。だって隼人はこれから大切なお仕事なんだから。遅れるわけにはいなかないもの。
「いってらっしゃい」
「ああ」
軽く微笑み、隼人を送り出す。
「ごめん」
ドアの向こうに消える寸前、聞こえた言葉。小さすぎて私には聞こえないと思ったかな? でも、聞こえたよ。たしかに。
ねえ、何に対しての”ごめん”なの? ねえ、ねえ。
帰ってくることのない、問いかけとともに、私は再びシーツを握り締めた。
あとがき
おまたせしました、果奈さん
+10獄寺で切甘……になっていますでしょうか?
ちなみに獄寺がどこに行くのかはご想像にお任せします^^
Thank You 39000Hit!!
10/07/10