リボーン短編2

□第一印象
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 あっれ。おっかしいなぁ。ここ、さっきも通った気がしなくもないんだけど……。ていうか私は今、何階にいるの? 2-Aはどこ!? ああ、完璧迷ったな。まあ、転校初日だから仕方ないっちゃあ仕方ないんだけど。そんなことよりセンセー!! なぜに初めて学校に来て、何も分からない私を置いて行っちゃったんですかね? 私がトイレから出てくると、さっきまでいたはずの担任の姿が、忽然と消え、そこには私の荷物だけが虚しく取り残されていた。トイレぐらい待っててくれたっていいのに。まったく。何とかなるとか思っちゃった私も私なんだけどさぁ。この学校、迷路みたい。

 それにしても誰もいないし、静かだな。まあ、授業中なんだから当たり前か。授業が始まっても私が教室に来ないのに、探しに来ない担任って一体……。心の中で悪態をつく。あくまで心の中で。

「わっ!」

 そう悲鳴を上げたのは、階段に足を掛けたところ、見事に踏み外したから。あーあ。授業中じゃん、今。ケガしても誰も助けてくれないじゃんよ。そんなことを落ちる途中、考えた。人間ってこういう時、意外と冷静だよね……。

 これから来るだろう衝撃に備えて、目を閉じようとした時、視界の端に人がいるのが見えた。誰だろう。もしかして担任?

 見えた次の瞬間、私は地面に落ちた。衝撃が体全体に伝わる。痛い。けど、痛くない。え? 痛くない? 不思議に思い、私はゆっくりと体を起こした。

「ねえ、早くどいてくれない? 重いんだけど」

 体を起こすと、声が聞こえた。下から。ん? 下から声?

「って、うわあぁ!!」

 声がしたのだから、当然そこには人がいて。衝撃がこなかったのは、この人を下敷きにしてしまってたからみたいだ。下敷き。うん。私が上に乗ってる状態。

「ごごごごっごごごめんなさいぃぃ!! すみません!」

 謝りながら急いで横にずれる。ものすごく噛んだけど、気にしないでいただこう。横にずれた時、ずきりと足首に痛みがはしった。あれ? もしかして捻った?

 下敷きにしてしまった人を見る。彼は男の人。担任ではなく、生徒だった。だって先生、学ランなんて着てなかったし。ものすごく綺麗な人だ。ちょっと目つき悪いけど、整った顔。触らなくてもサラサラだと分かる黒髪。足首のことなんて忘れて、思わず見惚れてしまった。

 彼は起き上がると制服を軽く叩いた。それから私を足元からすっと視線で撫でた。

「君、制服が違うよ」

「は?」

 突然のことで話が読めず、聞き返すと彼は私を指差してもう一度、制服、と言った。ああ、私が着ている制服が並中のものでないと言いたいのか。並盛はブレザー。私が着ているのはセーラー。

「あ……。私、今日転校してきたばかりなんです。それで、制服は間に合わなくって……」

「そう」

 簡潔に答えれば、彼も簡潔に返事をした。でも、私に違うと言ったけれど、興味のなさそうに向けられた背中はどう見ても学ランで。彼も並中の制服ではない。もしかしてこの人も転校生……なわけないか。

「ねえ、いつまでそこに座ってるつもりなの? そこにいたいなら止めないけど」

 突然、振り返ったものだから、少しだけ肩がびくりと跳ねた。ん、ああ、そうだよ。私、足捻ってるんだよ。思い出された足首がズキズキと痛み出す。

「いや、あの……足捻っちゃったみたいで……」

 そう言うと、彼は何でこんなことで? もしくはバカじゃないの? とでも言いたそうな顔をした。はい。ごもっともです。こんなことで捻挫なんて笑えないです。バカだな自分、とため息をついた。その私の体が宙に浮いた。

「わあ! 何するんですか?」

「何って足、痛いんでしょ?」

 そう言って事も無さげに歩き出した彼。私を肩に担いでいるというのに、普通に階段を下り始めた。た、高くて怖いんですけど?

 どんどんと階段を下りていく。どうやら私は三階の階段から落ちたらしい。

「ちゃんと診てもらいなよ」

 そう言って、降ろされたのは保健室の前。わざわざ、担いで保健室にまで連れて行ってくれるなんて、優しい人!

「ありがとうございました!!」

「別に」

 慌ててお礼を言った私にそっけなく返事をした彼。そのまま歩いていってしまった。ああ! 何をやってるんだ、私は! 学年とか、クラスとか、名前とか聞いとけばよかったのに! でも、制服違ったから、すぐ見つかるかもしれない。見つかるといいな。また、会いたいな。






 後日、彼を見つけて本当の姿を知って、さらに惚れてしまったのは、また別のお話。









→あとがき

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