Secret Garden  捧げ物と戴き物

□☆ HOLLYNIGHT KISS
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ほんの一時(ひととき)だけ、瞬きと変わらぬ程度に閉じられていた六合の瞳が開かれた青龍のサファイアのそれと絡みあう。口付けあっている時に瞳を開けているその様は、何時もの六合らしくなかったし、人前で平気でじゃれあい抱き合う行為もどちらかと言えば慎重派で、青龍に言わせれば【恥ずかしがりや】の彼らしくも無かったが平素とは違い大胆な恋人に、不埒な思いを掻き立てられるのは多分男女共通の性(さが)だろう。
時折唇から洩らされる熱い吐息と誘うような小さな声と、それらとは対象的な愛らしい仔犬が主人に甘えているようなじゃれあいと。
すっと青龍の指が六合の背中を滑る。今までのような戯れ合いのそれではなく、明らかに誘いの仕草で恋人の躰に合図を送った。青龍の頬を舐めていた六合がそれを敏感に受けとめて、ほんの一瞬動きを止める。だがその合図を無視するつもりか、まだじゃれあいたいのか六合は何も無かったかのように青龍の頬を味わい何度か舐めあげた。
「彩輝。」
こんなありふれた誘いは失敗して当然かもしれないと少し後悔した青龍が恋人に声をかけると。
六合が鮮やかに笑って青龍の首に手を回して自分から彼を求める為に深く口付けた。深い青の青龍の瞳が驚愕したように瞠かれ…それから彼も笑って恋人の求愛を受け入れた。じゃれあうより遥かに慣れた意味を込めてお互いの躰に指先を触れて滑らせ確かめあう。言葉にする事など無意味。何よりもその行為が、躱しあう眼差し、触れ合う指先の記す軌跡が、二人お互いを求めあっていると知れる。
白い奇蹟を彩る青の祭典の下、その祝福を同様に受けたであろう恋人達の中の誰よりも激しくて淫らなKissを二人は互いに求めあい、与えあう。
聖なる夜に口付けを
絡む舌、猥らがましい音をたてる唾液さえも飲み干してしまいたいかの如く。何時もとは違う空間に、聖夜という造られた奇蹟に酔わされるなら上等。六合の指が青龍の耳元を滑る。今そこにも口付けられないのが残念だとでも言うかのように、冷たくて長い指は情熱的に彼の耳朶を滑り弄い(いらい)言葉よりも正直に彼が欲しいと告げていた。上滑りな愛の言葉よりもお喋りな指先の訴えとおねだりの囁き。それに答えるかのように青龍が六合の躰を抱いていた手の片方を外しコートの上からではあるが、はっきりと彼の腰から下肢にかけて指を滑らせた。それをわざと何度も上から下へ、下から上へと往復させてみせる。その指先に振動を加えてやれば青龍の恋人は己望んだ口付けで塞がれている唇から甘い呻きを洩らした。
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