Secret Garden  捧げ物と戴き物

□☆ HOLLYNIGHT KISS
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口付けあいながら青龍の指が六合の髪を滑り、時には絡めてよりその存在を楽しむように動く。その仕草はまるで今、抱き合い口付けあっている六合というその存在が幻では無いかと恐れているようであり、もっともっと恋人を感じたいという我が儘な感情の発露にも見えた。お互いの口腔に滑りこむ舌先が始まりの合図。それなのに青龍は六合の躰を無くしたくはない宝物、それも子供がお気に入りのぬいぐるみを誰にも取られないように半泣きの顔付きで抱えこむような、そんな駄々っ子を連想させるある意味無敵の我が儘を持って、六合の躰を抱きしめ彼の唇を占領し続けた。
六合の琥珀の瞳がその我が儘な子供のKissを受けている間に一度だけ、大きく開いた。彼は自分を限界以上に味わい食べ尽くそうとする恋人の、今は閉じられている青玉の瞳を隠す瞼の辺りに視線を止めてそれから彼を彩る〈氷雪と流水の祭典〉を、そう六合からしてみれば真実自分の最も愛する男の端整な容貌を引き立てる為に作られたかのような今季限りの舞台を見やる。偽りの神に捧げられるよりも彼を彩った方がこの祭典も本望だろうと恋する者の傲慢で六合はこのイルミネイションと装飾を青龍に捧げてしまった。後でこの風景と青龍を持参したデジカメに収めようと決めてから六合は今は我が儘な恋人の情熱を受け止める事に集中する。いや、むしろ自分の方がもっと彼を感じたいのだとその頭に回した手に力を込めて我から青龍の顔も躰も引き寄せた。
けれど まだ夜は長い。焦る事など無いだろう。求めるように引き裂くように トワイライト 眠らない都にも平等に訪れる黄昏時。注がれる光のあるか無きかでその在る場所の属性は決まるが恋人と共にある土地ならば約束の場所であるのだろう。
この手を取って 離さないで 連れていって 貴方。
貴方と共に在れる その場所へ。
青龍の舌が六合の口中を味わう事を中断して、自分を受けいれる為に開いている唇をなぞる。彼を味わっていた六合の舌がそれと触れ合った。口中ではなく外気の元で、舌を触れ合わせ絡めあう行為は何時も以上に淫靡な風合い。じゃれあう仔犬同士のように二人はお互いの舌で触れあい、それを頬に瞼に鼻先にさえ滑らせた。生温かく擽ったい感触も愛しい。お互いの長い髪に通された指。梳いて、絡めて時には巫山戯けて引っ張り求めあう。今宵一夜のホーリーナイト 何があろうと貴方のお気に召すままに。その腕の中で踊ってみせよう。
「貴方を強く求めながら。」
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