Secret Garden  捧げ物と戴き物

□☆ HOLLYNIGHT KISS
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「氷雪の白と流水の青だぞ?これ以上お前に似合う色彩はそう無いだろうに。俺にはそんな風に見えたから、只の白と青のクリスマスツリーとしてよりも、遥かに美しく感じられたのだがな。」
普段は寡黙な六合が一息にそう言い切って違うのか?とばかりに青龍を見つめる。
Color'S Feeling 
そうして感じる事も出来るのかと青龍は恋人の躰越しに〈白と青の融合〉を見やる。確かに自分の名前、と言うより号には〈青〉の一文字が入っているし、木将でありながら水将の一面も持ってはいる。けれど青龍は自分に例えられた、ありふれた色合いではありながら華やかに演出された色彩は六合の方に似合うと本気で思っていたのである。
陽光に透けて輝く黄褐色の長い髪と深い琥珀色の瞳。その持ち主の己(おの)が美しい思い人にはこの〈白と青の融合〉いや、〈青の祭典〉と言いかえても良いだろう。太陽の黄金(おうごん)の元より月の銀(しろがね)の下の方が華麗に映える舞台も似合うとその彼に見惚れてさえいたのだ。だが六合におまえに似合うと思ったからこそ単なるツリーとして見るより遥かに美しく感じられた、と評されて青龍は内心多いに照れを感じる反面、彼がそんな風にも自分を見つめ思っていてくれた事が嬉しくて、再び六合の唇に自分のそれを落とし重ねる。六合の、青龍の頬に滑らされていた彼の手に握られ暖められていたはずの手がさりげなくそこから外されて青龍の頭に回された。自分が間接的に美しいと表現した青龍の長い髪に。
黄昏に清らかに鐘が鳴る。白銀の雪の煌めきは無いものの、イミテーションではありながら本物の氷雪を凌駕するホワイトツリーを照らしだすイルミネーションが又変わる。今度は青を取り入れて氷雪と流水の祭典は一層華やかに艶にさえ満ちて夜空に一際その存在を浮かび上がらせた。
指を通せば、実は今日は下ろされたままだったと分かる六合の長い髪を腕を回した背中ごと抱きしめながら青龍は彼の唇を何度も何度も優しくついばんだ。六合もそれは拒みはしない、青龍が自分の唇にするのと同様に彼の唇を美味しそうに食む(はむ)。そうしてお互いの躰に回された手がより強く恋人の温もりを求めあった。
形を変えた祝福の色彩と音色が二人を包みこむ。今宵、人の間に生まれた神が造られた嘉すべき日、その聖なる夜に清らかに鐘が鳴る。敬虔に祈りを捧げたい者はキャンドルの灯(ともしび)の元そうすれば良い。己の神に縋ると良い。けれど青龍に必要なのは今抱きあって口付け躱している恋人だけであるし、六合に必要なのも自分を抱く情熱的な腕の持ち主だけであろうから。
この 静かな夜に。
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