Secret Garden  捧げ物と戴き物

□☆ HOLLYNIGHT KISS
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様々な高さ、角度から当てられるライトの明るさの計算し尽くされた差異の為、その白いクリスマスツリーは陰影も魅力の一つに変えて、訪れる人々に形を変えた祝福を与えているようだった。六合と青龍は他の恋人達と同様にその白い奇蹟に魅入っていたが、やがてどちらが言うともなくそのツリーの周りをゆったりと歩き出す。目立ったオーナメントの一つも無く、只様々な〈青〉を纏う純白。ペールブルーの薄い空から無人絶影の海を思わせるペルシアンブルーの濃い色合いに変わる青、又、青。雪原の白と蒼穹(そうきゅう)の織り成す自然の聖夜を演出したのなら、その試みは充分成功したと言えるだろう。
大袈裟に騒ぐ者や、はしゃぎ過ぎる者がいないというそれだけで、何処か敬虔な気持ちにさえなれるのだから生き物とは不思議なものかもしれない、が。
造られた奇蹟とは言え存分にその効力を発揮する〈白と青〉を見つめる六合の琥珀の瞳に溶かし混まれるその煌めき。彼の恋人の青玉の瞳はこの季節だけに存在させられた〈白と青の融合〉を見上げる六合の横顔を写していた。
普段は感情など殆んど読めないその表情に確かに宿る感嘆と賛美の色合いと。今見つめているものを素直に美しいと感じて詠ずる唇が其処にある。微かに綻んだその口の端(は)に青龍はほんの少し屈んで口づけた。
「宵藍?」
困った奴だ、とでも言いたげにほんの少し苦笑に変わった、それでも充分に穏やかな顔付きのまま六合が青龍にゆるりと振り返り視線を移す。その琥珀色の瞳がイミテーションの奇蹟ではなく自分を写した事を確認すると青龍は今度は彼の口の端などではなく、きちんと唇にKissをする。そうして軽くKissをしても、何時も人前でそうされる事を嫌がる六合は珍しく怒りはせずに、じゃれるように青龍の頬に手を触れた。
「あんなに綺麗な物を見ないのか?」
「見たさ。」
青龍はそのひやりとした手に自分の手を重ねて少しでもその手を温めようとするかの如く彼の長くて綺麗な指先を握る。六合がそうされる事によってか更に淡く笑んだ。
「確かに綺麗だな。お前に良く似合う。」
「俺に?馬鹿を言うな。あれはお前の色合いだろう?」
「俺の?」
〈白と青の融合〉が予想以上に美しかったからこそ、だがそのコラボレーションが自分の恋人にとても似合っていたので青龍は素直にそれを口にしたのだが、六合はさも意外そうにあれはおまえ、つまり青龍のイメージだと言ってくる。そんな事は全く感じていなかった青龍がこれも又意外そうに俺の?と問い返すように呟けば六合は少々呆れたような口調でこう言った。
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