書架
□保護者(仮)
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不安そうに見上げてくる昌浩の頭にぽん、と手を置く。
「わしが行ってやれれば良いんじゃが、その日は生憎仕事が入っていてな」
そこで一旦言葉を区切って、
「お主たち、誰かわしらの変わりに行ってくれ」
その言葉に全員の動きが一瞬止まった。
「待て晴明。なぜ俺がそんなことをやらねばならん」
最初に我に返ったのは青龍だ。
「そう言うでないよ」
「そうよ。昌浩が可哀そうよ」
晴明の後に続いたのは洗濯物をあらかた畳み終わった天后だ。
そして特大の爆弾を投下した。
「だからね。行きましょ?青龍」
「………は?」
青龍が間抜けた返事を返しのとほぼ同時、朱雀が待ったをかけた。
「いや、待て待て。二人で決めるな。──天貴と最近出かけてないから、俺も是非行きたい」
「そうね。朱雀」
そんなやり取りをテーブルから見ていた勾陣は、普段昌浩の事でギャーギャー騒ぐ男が余りにも静かなので背後を顧みた。
そこには軽やかに包丁の音を響かせる紅蓮の姿があった。
「騰蛇?」
立ち上がり紅蓮の傍まで行ってひょい、と覗き込めば静かに、だがしっかりと青筋を立てていた。
居間では未だに双方が議論を繰り広げられいる。
「…騰蛇?」
包丁を置き、居間に向かった。
不思議に思った勾陣もその後に続く。
言い争う朱雀と天后の間に割り込む。
「煩い。昌浩と行くのは俺だっ!」
茫然自失、とはまさにこれか。と傍にいた勾陣は一人納得する。
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