物語
□午後の一時
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騰蛇の耳元で甘い声を出してやる。
「騰蛇。そろそろ起きてくれないか?」
「…ん…ゃ」
「や、じゃないだろ?」
少し息をかけてやる。
「っ…な!勾!?」
驚き、反射的に立ち上がる。
これで、クラス中の視線は全て騰蛇に集まる。
恥ずかしさで、顔が赤くなりながらも現状を把握しようとしている。
「勾!これはどういう事だ?!」
「なに、お前が寝ていたので、起こしただけだ」
「起こすにも、もっと別の方法があるだろ!」
あぁ、授業も後五分か。
「おい、勾!聞いているのか?!」
「聞いていない」
こんなことで一々怒っいては、十二神将最強の名が泣くぞ、騰蛇。
「泣かんわ!」
コイツに人の心が読めたか?
つらつら考えていた勾陣の考えを遮断する声が響いた。
「貴様ら!何時まで人の授業を邪魔するきだ!!」
初めて青龍が生徒に怒鳴った。
この怒号を聞いた普通の神経の人間なら畏縮するだろうが、ここに居るのはそんじょそこらの人間ではない。いや、むしろ人間でもない。
「青龍、そんなに怒鳴っていては生徒達に嫌われるぞ?」
「いや、コイツはもう嫌われているだろ?」
ほけほけと、笑う二人だが周りの生徒達は冷や汗たらたらだ。
「貴様ら…いい加減に!」
―キーンコーン
カーンコーン―
「おっ青龍先生授業終わりましたよ、なっ勾?」
「あぁ、終わったな」
さっさと出てけと言わんばかりの顔だ。
青龍は眉間に皺を寄せたまま教室を出ていく。
その時の生徒達のホッとした顔。
笑えてしまう。アイツのどこが怖いのか。
勾陣には不思議でしょうがない。
でもやっぱりこの授業を楽しみにしてしまうのは、この授業でしか寝ない騰蛇を起こす事。
今後も出来れば、これはずっと私の仕事であって欲しい。
End.