図書

□君の見せる心
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「人形では…嫌だ」

ただ、隣にあるだけの存在など、人形と一緒ではないか。
守られるだけでは、闘将としての自分の存在が消えてしまう様に感じられる。

「人形なんかじゃない。お前は十二神将『勾陣』だろう?」

幼子をあやす様に頭を叩く。

「それに、俺の隣はお前だけだ。何年たっても誰にも譲る気は無い」

ここで一旦言葉を切って、勾陣を顧みた。

「勾が嫌だと言っても認めないからな」

にまっと笑えば、勾陣の顔にも笑みが浮かぶ。

「そう、だな。らしくない事を考えてしまった」

どこか吹っ切れた様に笑った。

「なぁ、騰蛇。ところでいつまでそうしているつもりだ」
「ん?―まぁ良いじゃないか」

今日だけだぞ。朱に染まった頬が窺える。

高い樹の太い枝に座った二人の上に、満月が輝いていた。


End.
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