図書
□贄―奴隷―
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その声には有無を言わせぬ響きが含まれている。
怖かったが向かないと、という思いが振り向かせた。
「!」
そこに居たのは、長い髪を一つで結って黒いマントで身体を隠した男だった。
そのなかで異常なまでに目を引くのは、やけに長い犬歯。
何故こんなに鮮明に見えたのか解らない。
「だ、誰?」
発せられたその声は震えていた。
「血を寄越せば、それ以上の危害は加えない」
「え?」
今、何と?
血…って、何言って。
「お前は吸血鬼を知っているか?」
「そんなの、居るわけないじゃない…」
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