書音
□喧嘩の後の
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慧斗が朝食を食べ終わった頃に、紅蓮が起きてきた。
「はよ」
「、あぁ…」
慧斗は入ってきた紅蓮から逃げるように、リビングを出ようとしたが、すれ違い様に声をかけられた。
「あぁ、勾。明日開けとけよ」
「は?」
「久しぶりにデートだ」
にっと得意気に笑った紅蓮が嫌だった。
「な、んだと…?」
小さい呟やきは、はっきりと紅蓮の耳に届く距離だ。
紅蓮は返された言葉の意味が分からず、首を傾げている。
「別にデートとか言うな。別れたいなら今、そう言えばいいだろ?」
それとも、最後まで私で遊ぶつもりだろうか。
「…お前、俺と別れたいのか?」
紅蓮は心底不思議そうに、やっぱり首を傾げる。
「!それはお前だろ!?」
「はぁ?何でそうなる」
「天后と会いたければ勝手に会え!」
「待て。何でそこに瑞希が出てくるんだ」
「煩い、知るか!」
寂しさと、疑問と、嫉妬とが入り交じり慧斗は混乱していた。
そんな慧斗を落ち着かせるために、紅蓮は肩を掴むと、そのまま引き寄せ抱きしめた。
「落ち着け。どうした?お前らしくないぞ」
「煩い、離せ。……離せ」
下から聞こえてきた声は、頼りないほど弱く、震えていた。
「離すわけないだろ。離したらお前どっかに行きそうだし」
紅蓮の言葉に、慧斗はのろのろと顔を上げ、視線を合わせた。
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