書架
□Turning point
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この日も昌浩は、いつも通り晴明に妖怪退治を押し付けられたくだんの妖と対峙していた。
ただ、いつもとは違う事柄が一つ。
「貴様ノ魂…。我ニ、寄越セッ」
「天后っ!」
昌浩、紅蓮、勾陣、という面子の中で天后は守りを担っている。
天后は目の前に来た敵を屠ふった。その隙をついて一匹の妖が天后目掛けて飛び出した。
そうして出た言葉が先の勾陣の叫びだ。
水気を集めて結界を張るが、持ちこたえられない。
結界が大きくたわんだのを天后は自覚した。
結界が割られるその瞬間、紅い炎が天后を囲う。
同じ炎を纏った紅蓮が、止めとばかりに、自らの得物を振り翳した。
耳を塞ぎたくなるような断末魔を残して、妖は消えた。
それと同時に、紅蓮の炎も消える。
「無事か、天后!」
妖を片付けた勾陣が、天后に駆け寄る。どうやら先程紅蓮が片付けたのが最後だったようだ。
「ええ。…それより」
天后は物の怪に姿を変えた同胞を見やる。
「なぜ手を出したの、騰蛇」
厳しく紅蓮を詰問する。
一方紅蓮は気まずそうに思わず目をさ迷わせた。
「あ、…いや、別に」
なぜと言われれば言葉がない。別に意識してやったわけではないから。
「余計な事をしないで」
冷たく切り捨てた天后を流石に勾陣が咎めた。
正確には咎めようとした。
「でも、助かったわ。ありがとう」
紅蓮は驚いたようにさ迷わせていた目を天后に向けた。
「あ、あぁ。気にするな」
まったく気にしてないとばかりに尻尾を振った。
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