書架
□雨ときどき晴れ
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コンビニへ行くと言ったのが三十分前。
「なら着いていく」と言われて断ったのが二十分前。
「だったら、雨が降りそうだから傘を持っていけ」とさらに言われたのが十五分前。
あまりにもしつこくて煩いので無言で出てきたのが十分前。
一番近くのコンビニまでは五分とかからない。
だが、勾陣は敢えて三つ先の少し遠いコンビニまで足を伸ばした。
そしてコンビニから出ようとした時に問題が起きた。
外ではサァサァと音を立てて雨が降っていた。
一番近いコンビニならば走って帰っても良いが、残念ながらここは徒歩で十分程かかるのだ。
普段なら問答無用で呼び出して迎えに来させるのだが生憎携帯を持って来なかったのでそれも出来ない。
「はぁ…、仕方ないな」
勾陣はため息をつき、雨の下に駆け出した。
どうせ通り雨だろう、というのが勾陣の予測だ。
空は明るい。だが、雨脚は弱まる事を知らない。
勾陣はあっという間にびしょ濡れになった。
所々で雨宿りをする、というのは果てしなく時間の無駄、かつ、果てしなく体力の無駄だ。
よって五分以上勾陣は雨の中を走り続けていた。
家に帰った時のあいつの顔が目に浮かぶ。
『バカ野郎!だから傘を持っていけと言ったんだ!』
と叫びながらそれでも心配してタオルで髪などを拭いてくれるのだ。
それがありありと想像出来て、勾陣は思わず笑みを溢した。
さぁもうすぐ一番近くのコンビニだ。
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