書架

□保護者(仮)
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勾陣は隣で眠る紅蓮を見てくすり、と声を漏らした。

それから何の気なしに空を仰いだ。

(あぁ、確かあの日も天気の良い日だったな)


◇ ◇ ◇


「ただいまー」

小学校に上がったばかりの末っ子が、元気良くガラスの引き戸を開けた。

「おかえり」

出迎えたのは二十そこそこの女性──勾陣だ。
昌浩は座り込んで靴を脱ぐと、そのままランドセルを下ろした。

「どうした?」
「ん……あっ、あった!」

がさがさ漁っていたランドセルから昌浩は紙切れを一枚取り出し、勾陣に渡した。

「…授業参観?」
「うん!」

渡された紙切れは授業参観のお知らせを告げていた。

「まだ吉昌も露木も帰ってないからな、晴明にでも持っていけ」

返されたプリントを受け取って、「じい様ー!」と呼びながら晴明の部屋に駆けていった。
それを見届けた勾陣は台所へ戻った。


台所で紅蓮がせっせと料理の食材たちと格闘していて、勾陣はテーブルについて頼まれたら頼まれた物だけを片付けていて、居間では朱雀と天一が寛いでいて、
天后が今日の洗濯物を畳んでいて、たまたま帰宅していた青龍が居間に寄った時だ。


晴明が昌浩と手を繋いで現れた。
反対の手に見覚えのある紙を持って。
その表情は少し困ったような苦笑だ。

「どうされました?晴明様」

天一がやんわりと尋ねる。

「それがのぅ。今度の昌浩の授業参観なんじゃが、吉昌も露木も仕事が入っておってな」

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