書架

□幸せ。だから、
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夜。異形の者が跳梁跋扈する時間。

昌浩は都を闊歩していた。
その隣にあるのはいつもの白い影ではなく、黒髪の長身の女性。

「俺、勾陣と二人きりって初めてかも」と笑う昌浩にそうだな。と返す。

「特に何も異変は無いようだが、どうする?」
「んー、もうちょい見てから帰るよ」

突如、強い風が吹いた。
風上を向いていた昌浩は、咄嗟に顔を腕で覆った。

「わっ!」

腕を降ろした昌浩の衣は、至るところが破れていてその下からは鮮血が流れていた。

「大丈夫か?昌浩」
「う、うん。だけど何でただの風で…」

頬から流れていた血を拭う昌浩を視界の隅に映しながら、勾陣は築地塀の上に飛び乗った。


それがいけなかった。


「うわっ…!」

勾陣が昌浩を視界戻した時には、既に鎌鼬が昌浩を襲っていた。

「昌浩!」

筆架叉で鎌鼬を消滅させる。
だが、昌浩には既に無数の深い傷があった。

鎌鼬が消えた事で、崩れ落ちた昌浩を支えた。

「鎌鼬で良かったろ。あれなら傷はすぐに塞がる」
「地祗!貴様が放ったのか?」

殺気にもには眼光。

「今回は鎌鼬だったが、次は殺すぞ?」
「!」

この神は嗤うのだ。
晴明を殺すと。昌浩を殺すと。
知っているのだ。どこに触れれば傷つくか。

「死んで欲しくない人間の為に我が許へ来い」

期限は付けぬ。今ここでお前一人で決めるのだ。

勾陣の瞳から光が消えた。
大切な人達を守るために。

「……昌浩を置いてきても良いか?いくら傷が塞がっていても意識が無い状態で置いては行けない」

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