図書
□君の見せる心
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夜。一人の女が木々の間から覗く月を見ていた。
「闘将の私が戦う力を無くしたら」
綺麗な黒曜の瞳に憂いを浮かべ、語りかける。
「お前はどんな反応をみせる?」
言ってから、表情が陰る。
「要らない、か…」
闘将は戦うものだ。力が無くては意味がない。
葉を踏む音がしたが、今の彼女は気づかない。
「そんなことない」
言葉と共に、ふわりと回される逞しい腕。
「騰蛇?」
なぜ彼がここに居るのだろう。
彼女が邸を出た時は、確かに寝ていたのに。
「変な事を考えるな。お前は俺の隣に居ればいい」
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