図書

□夜空の星に想いを込めて
1ページ/2ページ

時は平安。
夜の都を魑魅魍魎が跳梁跋扈していた時代の穏やかな日。

平安京の一角。安倍邸の屋根の上。
徒人には視えない一人の男がそこに居た。

「六合?」

声をかけたこの女性も徒人には視えない。
六合と呼ばれた男は振り向くが何も言わない。

「綺麗だな。星」

彼女は、隣に腰を降ろし、同じように夜空を見上げる。

陰陽師達が見れば、星は人の宿命を示すものだが、彼女達には解らない。

「遠いな。星は」

その手に星を掴もうと手を伸ばすが、決して届かない。

彼の言葉にどんな思いがあるか彼女には分からないが、切なさが含まれていた。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ