図書
□夜空の星に想いを込めて
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時は平安。
夜の都を魑魅魍魎が跳梁跋扈していた時代の穏やかな日。
平安京の一角。安倍邸の屋根の上。
徒人には視えない一人の男がそこに居た。
「六合?」
声をかけたこの女性も徒人には視えない。
六合と呼ばれた男は振り向くが何も言わない。
「綺麗だな。星」
彼女は、隣に腰を降ろし、同じように夜空を見上げる。
陰陽師達が見れば、星は人の宿命を示すものだが、彼女達には解らない。
「遠いな。星は」
その手に星を掴もうと手を伸ばすが、決して届かない。
彼の言葉にどんな思いがあるか彼女には分からないが、切なさが含まれていた。
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