図書
□贄―奴隷―
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今日は残業が長引いて、家に帰ったのは"今日"が"昨日"になるまでそんなに時間がかからない頃だった。
「…ふぅ」
鞄から家の鍵を探しだし、中に入った時に人の気配を感じた。
だがそれはすぐに否定される。だって自分は独り暮らしだから。
一直線に寝室に向かいベッドに身を沈める。
「着替えなきゃ…」
スーツで寝てしまっては皺が出来てしまう。
起き上がろうとしたが、背後に気配を感じ身体が固まった。
暗闇の中では姿を捉える事が出来ない。
姿の見えない相手ほど怖いのだ。
「こちらを、向け」
それは低い、男の声だった。
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