巻物
□小さな事は記憶に残らず
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それは安部家には本来居ない者。否、居たが形が違った。
「何で、だ?」
居間の入口で棒立ちになった紅蓮が見たのは、青龍の膝の上で眠る幼子だった。
◇ ◇ ◇
それは昨日の事だった。
六合が夕飯の仕度をしていた時だった。
「のぅ六合や」
晴明が台所にやって来た。
それはそれは面白そうな笑みを浮かべて。
「何だ晴明」
少し、否、かなり嫌な予感がする六合。
まあ、全く表情に出てはいないが。
「これを誰かのお茶の中に入れくれんか?」
差し出したのは小さな小瓶。
かなり怪しい。
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