巻物

□想い出
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二人目の主が死んでからは滅多に来なくなった人界に彼女は居た。

何をするわけでもなくただ見つめていた先には、季節外れの紅い蓮の花。

己の存在を主張するかの様に咲き誇るその花を静かに見ていた。

あの花が、桃色だったなら彼女はその存在に気付いても眺める事はしなかっただろう。
あの花が、ただ紅い別の花だったなら彼女はその瞳にこんな色―憂いと哀しみと、僅かな怒り―を浮かべる事はなかっただろう。

『十二神将騰蛇』は一度死んだ。彼女との約束を破って。

再びがあったら俺を殺してくれ。

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